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「中の人」からもついに出た! 子どもの権利条約遵守義務を放棄した厚労省の児虐政策批判

アジア諸国が嘲笑する日本の児童虐待防止政策」という衝撃的な節題を掲げて、現花園大学の和田一郎教授が厚労省の児虐政策を厳しく批判する記事を発表しました:
『児童虐待防止政策』には致命的な問題がある

Screenshot of toyokeizai.net

和田教授は、かつて茨城県職員で、児相行政にも携わったものと思われます。その後、厚労省の有力外郭研究機関である「日本子ども家庭総合研究所」で3年間主任研究員を務め、現職となりました。いわば、厚労省の「中の人」です。しかも、これまで、日本の児童虐待防止政策の国際的評価というテーマでの論稿は発表していませんでした。そこから、このような厳しい、いわば内部批判が出てきたのです。2019年3月に発出された、国連子どもの権利委員会第4,5回総括所見での事実認定と緊急勧告が影響していることは明らかでしょう。事実、この記事には、国連総括所見が、2度にわたって引用されています。

記事は、2010年以来国連人権関係委員会が10年にわたり是正を勧告してきた日本の児童相談所の人権侵害について、国連総括所見等を通じその酷い実態を知ったであろうアジア諸国が、「『日本の方式以外だったらうまくいくだろう』と嘲笑」しはじめた、というのです。かつてアジア諸国は、日本の技術や制度を手本とし、国際的なキャッチアップを図ってきました。それが最近になって180度姿勢を転換し、日本の児相・児虐行政を「失敗例」ととらえるようになったことの意味は重大です。
和田教授は、「日本は「子どもの権利条約」に1994年に加盟しました。条約を批准した各国の政府は子どもたちの権利を実現するために、国内法の整備などを具体的に進める必要があります。/ しかし、わが国はその国内法の整備を『まったく』行ってこなかったのです。」と指摘します。これは、日本の自称「子どもの権利」団体ですらどこもこれまで認めたがらなかった事実であり、この指摘は極めて重要です。これに対しアジア諸国は、国連子どもの権利条約を批准した以上は国内制度を条約と整合的なものとする決意を固め、国連子どもの権利委員会から勧告を受けたら、これを国内で実行するための努力を一生懸命に払って、自国の児童行政を国際的にキャッチアップさせるよう頑張ってきました。ところが日本の厚労省行政を見ると、これとは真逆に、条約批准から3年後の「児発434号通知」(児相が「保護」した児童を親に返還することを拒否せよ、と児相に通知し、司法審査なき児相拉致を通達で制度化した)、そして2000年の児童虐待防止法第12条の面会禁止規定など、子どもの権利条約に違反する制度をますます強固にしてきたのです。

和田教授は、「一時保護」等に際し司法審査が無いことだけを児相問題としているのですが、国連子どもの権利委員会の総括所見をきちんと読めば、「致命的な問題」はほかにも沢山あることがわかります。すなわち国連の勧告は、児相収容所(児相併設一時保護所)の全面廃止、脱施設化(児童養護施設の大幅縮小)、親子の面会権を児相が奪っている事実、そして児相の拉致が金銭的インセンティブで行われている疑惑にまで及んでいるのです。司法審査は重要な論点であるとはいえ、国連が指摘した児相の人権侵害の全体からすれば、氷山の一角に過ぎません。そして、アジア諸国も、司法審査のみならず、国連が扱っている児相の人権侵害全体を問題にして「失敗例」とみなしていることは明らかです。

ところが和田教授は、児童虐待予算の不足・児童福祉司増員・親権剥奪など権限強化をこの記事で唱えています。残念ながら、こちらの方は、従来からの厚労省の主張そのままで、親権剥奪促進などは、2019年の国連子どもの権利委員会総括所見第27項(a)に違反しています。これは、戦争を進める軍部に、「平和」を口先で説教しながら実際には予算・兵士・権限をどんどん与えるようなもので、こんなことをすれば、平和が訪れるどころか、悲惨な戦争がますます拡大するのは子どもでもわかる話です。その結果、国際社会の力による敗戦、つまり嘲笑と批判がさらに強く日本に押し寄せてきます。
ハンセン病患者拘禁政策という悪い見本が既にあることを、同じように児相職員から大学教授に転身した山野良一氏がすでに指摘しています(上野加代子編著『児童虐待のポリティクス』明石書店 に所収の論稿)。このことに和田教授は気づかないのでしょうか。厚労省の児虐行政に、アジア諸国から悪い見本のように批判される問題がある以上、予算や人員増大を説くより先に、まず児相並びに児童養護施設の抜本的リストラを含む制度の白紙改革こそ不可欠です。和田教授がこれを黙して語らないのは、やはり「中の人」だからなのでしょうか。

司法関与にしても、現在の家裁の、児相の申し立てにあたって児相と家裁の裁判官・調査官で事前協議がなされ、その後家裁はそのまま申立てにメクラ判を捺すだけ、と言ったセレモニーのような司法ならば、いくら関与を増やし、家裁調査官を増員しても血税の無駄遣いで、ほとんど意味がありません。子どもの権利条約や国連勧告等の国際人権規範に則り、児相と裁判所の事前協議や、家裁調査官と児相との癒着などを全面的に排し、三権分立という憲法の理念にのっとって、児相事件における司法の完全独立を実現する司法改革も要求していく必要があります。

ダイヤモンドプリンセス号での厚労省の対応が「政府が公衆衛生危機に対処しないという、教科書に載るほどに(悪い)対策の見本」とニューヨークタイムズから厳しく批判されました。「中の人」は、このような厚労省とヘソの緒が半分まだつながっているような姿勢を改め、この記事以上にもっと人権侵害の児相・児童養護施設のありさま、そして司法と児相との癒着の問題について大きな声を挙げる必要があります。そうでなければ、厚労省=児相の行政への、アジア諸国から、そして国連をはじめとする世界からの嘲笑は、いっそう高まるばかりとなるでしょう。