総括所見の和訳
日本の第4、5回合併定期報告書に関する総括所見
I.序論
1. [⼦どもの権利]委員会は、2019年1⽉16⽇および17⽇に開かれた第2346回および第2347回会合(CRC/C/SR.2346 及び 2347参照)において、⽇本の第4回・第5回合併定期報告書(CRC/C/JPN/4-5)を検討し、2019年2⽉1⽇に開かれた第2370回会合においてこの最終⾒解を採択した。
2. 委員会は、締約国[⽇本]における⼦どもの権利状況についてよりよく理解させてくれた、締約国の第4回・第5回合併定期報告書および求釈明書に対する⽂書回答(CRC/C/JPN/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部⾨から成る代表団との間に持たれた建設的対話に、評価の意を表する。
Ⅱ.締約国によってとられた前回の勧告への対応および達成された進展
3.委員会は、⼥性および男性の双⽅について最低婚姻年齢を18歳と定めた2018年の⺠法改正、2017年の刑法改正、2016年の児童福祉法改正、および、児童ポルノの所持を犯罪化することになった児童買春、児童ポルノに係る⾏為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律の改正を含む、締約国がさまざまな分野で達成した進展を歓迎する。委員会はまた、⼦供・若者育成⽀援推進⼤綱(2016年)、第4次⻘少年が安全に安⼼してインターネットを利⽤できるようにするための施策に関する基本的な計画(2018年)および⼦供の貧困対策に関する⼤綱(2014年)のような、前回の審査以降に⼦どもの権利に関連してとられた制度的および政策的な措置も歓迎する。
Ⅲ.主要な懸念の領域および勧告
4.委員会は、締約国に、[⼦どもの権利]条約に盛り込まれたすべての権利が不可分かつ相互依存していることを締約国が想起するよう求め、この最終⾒解に含まれているすべての勧告の重要性を強調する。委員会は、緊急に処置が講じられなければならない以下の諸分野に関わる勧告について、締約国の注意を喚起したい: 差別の禁⽌(18段落)、⼦どもの意⾒の尊重(22段落)、体罰(26段落)、家庭環境を奪われた⼦どもたち(29段落)、⽣殖に関する健康および精神保健(35段落)ならびに少年司法(45段落)である。
5.委員会は、締約国が、持続可能な開発のための2030アジェンダの実施過程全体を通じ、条約、武⼒紛争への⼦どもの関与に関する選択議定書、および⼦どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書にしたがって、⼦どもの権利の実現を保障するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、17の⽬標の達成を⽬的とする政策およびプログラムの⽴案および実施において、それが⼦どもたちに関することであるかぎり、⼦どもたちに意味ある参加を保障することを、強く求める。
A.実施に関する⼀般的措置(第4条、第42条および第44条(6))
留保
6.委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、10段落)にのっとり、締約国が、条約の全⾯的適⽤の妨げとなっている第37条(c)への留保の撤回を検討するよう勧告する。
立法
7.さまざまな法律の改正に関して締約国から提供された情報には留意しつつ、委員会は、締約国が、⼦どもの権利に関する包括的な法律を採択し、かつ、既存の国内法を条約の原則および規定と完全に調和させるための対策をとるよう、強く勧告する。
包括的な政策および戦略
8.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野を包含し、かつ政府諸機関間の調整および相互補完性を保障する包括的な⼦ども保護政策を策定するとともに、⼗分な⼈的・技術的・財政的資源に裏づけられた、当該政策のための包括的な実⾏戦略も策定するよう、勧告する。
統括
9.委員会は、締約国が、部⾨を横断し、そして国、地⽅および地元のレベルで⾏なわれている条約の実⾏に関連したすべての活動をとりまとめる明確な任務および⼗分な権限を有する適切な統括機関、ならびに、すべての⼦どもおよび条約のすべての分野を対象とする評価および監視の機構を設置するべきであるとする、前回の勧告(前掲、14段落)を繰り返す。締約国は、当該統括機関に対し、その効果的運⽤のために必要な⼈的・技術的・財政的資源が提供されることを保障すべきである。
資源配分
10.⼦どもの相対的貧困率がこの数年⾼いままできた事実に鑑み、かつ⼦どもの権利実現のための公共予算編成についての⼀般意⾒19号(2016年)を想起しながら、委員会は、締約国が、⼦どもの権利の視点を含み、⼦どもに対する配分額を明確に定め、かつ条約の実施のために割り当てられる資源配分の適切さ、効果および公平性の監視および評価を⾏なうための具体的指標および追跡システムを含んだ予算策定⼿続を確⽴するよう、強く勧告する。それに含まれるのは:
(a) ⼦どもに直接影響を与えるすべての⽀出の計画・決定・補正および実際の⾦額について、詳細な予算制約線および予算規則を定めること、
(b) ⼦どもの権利に関連する⽀出の報告・追跡・および分析を可能にする予算分類システムを⽤いること、
(c) サービス提供のための予算配分額の変動または削減によって、現在の⼦どもが権利を享受している⽔準が低下しないよう保障すること、
(d) 「⼦供・若者育成⽀援推進⼤綱」の実施のために適切な資源を配分すること。
データ収集
11.締約国によるデータ収集の取り組みには留意しつつ、委員会はまた、いまなお⽋落が存在することに留意する。条約の実施に関する⼀般的施策についての⼀般意⾒5号(2003年)を想起しながら、委員会は、締約国が、とりわけ⼦どもの貧困、⼦どもに対する暴⼒ならびに乳幼児期のケアおよび発達の分野など条約のすべての分野において、データが年齢・性別・障碍・地理的⽴地・⺠族的出⾃および社会経済的背景別に細分化されているようにデータ収集システムを改善するとともに、そのデータを政策⽴案およびプログラム策定のために活⽤するよう、勧告する。
独⽴した監視
12.地元のレベルで⼦どものためのオンブズパーソンが33機関設置されていることに留意しつつも、これらの機関は財政および⼈的資源の独⽴性ならびに救済機構を⽋いているとされる。委員会は、締約国が次の処置をとるよう勧告する:
(a) ⼦どもからの苦情を⼦どもに細⼼の注意を払うやり⽅で受理し、調査しかつこれを処理できる⼦どもの権利監視を専ら⾏なう機構を含んだ、独⽴⼈権監視機構の迅速な設置、
(b) ⼈権の保護及び促進のための国内機構の地位に関する原則(パリ原則)の全⾯的遵守が確保されるよう、資⾦・任務・および免責の関連も含めこの監視機関の独⽴を保障。
普及、意識啓発および研修
13.意識啓発プログラムおよび⼦どもの権利についての広報宣伝活動を実施するために締約国が⾏なっている努⼒を認識しつつ、委員会は、締約国は以下を勧告する:
(a) とりわけ⼦どもと親の間に、しかし、⽴法⼿続および司法⼿続における条約の適⽤を保障するため⽴法府議員および裁判官に対しても、条約に関する情報の普及を拡⼤する
(b) 教員、裁判官、弁護⼠、家庭裁判所調査官、ソーシャルワーカー、法執⾏官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む、⼦どものためにおよび⼦どもとともに働くすべての者を対象として、条約およびその議定書に関する具体的な研修セッションを定期的に実施する。
市⺠社会との協⼒
14.締約国報告書の作成過程における市⺠社会との会合および意⾒交換を歓迎しつつも、委員会は、締約国が、市⺠社会との協⼒を強化し、かつ条約実施のあらゆる段階で市⺠社会組織を組織的に巻き込むよう勧告する。
⼦どもの権利と企業部⾨
15.企業部⾨が⼦どもの権利に与える影響に関わる国家の責務についての⼀般意⾒16号(2013年)および2011年に⼈権理事会が承認したビジネスと⼈権に関する指導原則を参照しつつ、委員会は、締約国に以下を勧告する:
(a) 企業の権利と⼈権に関する国別⾏動計画を策定するに際しては、⼦どもの権利がそこに統合され、かつ、会社に対し、定期的な⼦どもの権利への影響評価ならびに協議を実施するよう保障すること、ならびに、その企業活動が及ぼす環境・健康関連・および⼈権への影響ならびにこれらの影響に対処するための計画を全⾯的かつ公的に開⽰することを保障すること、
(b) ⼦どもの権利にとって緊要な、労働および環境に関するものを含む国際規準の遵守について企業部⾨に説明責任を果たさせるための規則を採択しかつ実施すること。
(c) 旅⾏業界、メディアおよび広告会社、娯楽産業ならびに公衆⼀般と連携して、旅⾏および観光の脈絡における⼦どもの性的搾取防⽌について、意識啓発の広報宣伝活動を実施すること。
(d) 旅⾏代理店および旅⾏業界の間に、世界観光機関の世界観光倫理憲章を広く普及すること。
B.⼦どもの定義(第1条)
16.⼥性および男性の双⽅について最低婚姻年齢を18歳と定めた⺠法改正には留意しながらも、委員会は、2022年にならなければ同改正が施⾏されないことを遺憾に思い、締約国が、それまでの間、条約に基づく締約国の義務にのっとって児童婚を完全に解消するために必要な当⾯の処置をとるよう勧告する。
C.⼀般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)
差別の禁⽌
17.委員会は、⾮婚の両親から⽣まれた⼦どもたちに同⼀の相続分を認めた⺠法の⼀部を改正する法律(2013 年)、本邦外出⾝者に対する不当な差別的⾔動の解消に向けた取組の推進に関する法律の採択(2016年)、および、審査の際に⾔及された意識啓発活動に留意する。委員会はさらに、強姦罪の構成要件を⾒直し、男⼦にも保護を与えた刑法改正(2017年)も歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下につき依然として懸念する:
(a) 包括的な反差別法が存在しないこと。
(b) ⾮婚の両親から⽣まれた⼦どもたちの⾮嫡出性に関する、とくに出⽣届に関係した⼾籍法の差別的規定が部分的に維持されていること、
(c) 周縁化されたさまざまな集団の⼦どもたちに対する社会的差別が根強く残っていること。
18.委員会は、締約国に対し、以下について強く要求する:
(a) 包括的な反差別法を制定すること。
(b) ⾮婚の両親から⽣まれた⼦どもたちの地位に関連する規定を含め、理由の如何を問わず⼦どもを差別しているすべての規定を撤廃すること。
(c) とくに、アイヌ⼈たちを含む⺠族的少数者、同和地区の⼦どもたち、韓国/朝鮮⼈のような⽇本⼈以外の出⾃の⼦どもたち、移⺠労働者の⼦どもたち、⼥性と男性の同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー、半陰陽の⼦どもたち、婚外⼦および障碍のある⼦どもたちに対して現実に⾏なわれている差別を減少させかつ予防するための、意識啓発プログラム、広報宣伝活動および⼈権教育を含む施策を強化すること。
⼦どもの最善の利益
19.委員会は、⼦どもの最善の利益を第⼀義的に考慮に⼊れさせるという⼦どもの権利が、とくに教育・代替的養護・家族紛争・および少年司法において適切に統合されておらず、⼀貫して解釈され適⽤されておらず、そして、司法・⾏政・および⽴法機関が、⼦どもたちに関係したすべての決定において⼦どもの最善の利益を考慮しているわけではないことに留意する。⼦どもの最善の利益を第⼀義的に考慮に⼊れさせる⼦どもの権利についての⼀般意⾒14号(2013年)を想起しつつ、委員会は、締約国が、⼦どもに関連するすべての法律および政策の影響評価を事前ならびに事後に実施する⼿続を義務化する⼿続を確⽴するよう勧告する。委員会はまた、⼦どもに関わる個別の事案について、⼦どもの最善の利益についての評価を、多分野から成るチームによって、関係した⼦ども本⼈の参加を義務付けて常に⾏なうことも勧告する。
⽣命、⽣存および発達に対する権利
20.委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3 42段落)を想起し、締約国に対し、以下を強く要求する:
(a) ⼦どもたちが、社会の競争的性質によって⼦ども時代および発達を害されることなく⼦ども時代を享受できることを保障する処置をとること。
(b) ⼦どもたちの⾃殺の根本原因に関する調査研究を⾏ない、予防処置を実⾏し、かつ、学校にソーシャルワーカーおよび⼼理相談サービスを配置すること。
(c) ⼦どもたちの施設が適切な最低安全基準を守ることを保障するとともに、⼦どもたちに関わる不慮の死亡または重傷事案について、⾃動的に・独⽴し・かつ公的な検証を導⼊すること。
(d) 交通・学校・および家庭内の事故を予防するための的を射た処置を強化し、交通安全・安全および応急⼿当の提供・ならびに⼩児緊急ケアの拡⼤を保障する処置を含む適切な対応を保障すること。
⼦どもの意⾒の尊重
21.2016年の児童福祉法改正が⼦どもの意⾒の尊重に⾔及していること、および、家事事件⼿続法が諸⼿続における⼦どもの参加に関わる諸規定を統合していることには留意しながらも、委員会は、⼦どもたちに影響を及ぼすあらゆる事柄について⾃由に意⾒を表明する⼦どもの権利が尊重されていないことを依然として深刻に懸念する。
22.意⾒を聴かれる⼦どもの権利についての⼀般意⾒12号(2009年)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、⼦どもへの脅迫および処罰を防⽌する安全策を講じつつ、意⾒をもてるいかなる⼦どもに対しても、年齢制限を設けることなく、その⼦どもに影響を与えるすべての事柄について⾃由に意⾒を表明する権利を保障し、かつ、⼦どもの意⾒に相応の重要性が与えられることを保障するよう強く要求する。委員会はさらに、締約国が、意⾒を聴かれる権利を⼦どもが⾏使できる環境を提供し、そして、家庭・学校・代替的養護および保健医療の現場、⼦どもに関わる司法および⾏政⼿続・ならびに地域共同体において、環境問題を含むすべての関係ある問題に関し、すべての⼦どもが有意義に、かつ⼒を与えられながら参加することを積極的に促進するよう、勧告する。
D.市⺠的権利および⾃由(第7条、第8条および第13〜17条)
出⽣登録および国籍
23.持続可能な開発⽬標のターゲット16.9を想起しつつ、委員会は、締約国に以下を勧告する:
(a) 両親の国籍を取得できない⼦どもたちに対しても出⽣時に⾃動的に国籍を付与するため国籍法第2条(3)の適⽤範囲を拡⼤することを検討するとともに、⾮正規移住者の⼦どもたちを含む締約国に暮らすすべての⼦どもたちが適正に登録され、かつ法律上の無国籍から保護されることを保障するため、国籍および市⺠権に関わるその他の法律を⾒直すこと。
(b) 亡命希望者である⼦どもたちのように、登録されていないすべての⼦どもたちが教育・保健・その他の社会サービスを受けられるよう保障するために、必要かつ前向きな処置をとること。
(c) 無国籍の⼦どもたちを正しく特定しかつ保護するため、無国籍を認定する⼿続を開発すること。
(d) 無国籍者の地位に関する 1954年条約、および無国籍の削減に関する1961年条約の批准を検討すること。
E.⼦どもたちに対する暴⼒(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条および第39条)
虐待、ネグレクトおよび性的搾取
24.委員会は、性的虐待被害者のためのワンストップセンターを各都道府県に設置し、18歳未満を監護する者による性交および猥褻⾏為に関わる罪を新設した刑法第179条の改正を歓迎する。しかしながら委員会は、あらゆる形態の暴⼒からの⾃由に対する⼦どもの権利についての委員会の⼀般意⾒13号(2011年)を想起し、かつ持続可能な開発⽬標のターゲット 16.2に留意しつつ、⼦どもたちへの暴⼒・性的虐待・および搾取が⾼い⽔準で発⽣していることを懸念し、締約国が、⼦どもたちに対するあらゆる形態の暴⼒の撤廃に優先的に取り組むこと、そして次のことを勧告する:
(a) 学校におけるものも含む虐待および性的搾取の被害児を対象とし、被害児に特有のニーズについて訓練を受けた職員によって⽀えられる、通報・苦情申⽴ておよび紹介のための⼦どもにやさしい機構の設置を加速してとり進めること。
(b) これらの事件を捜査し、かつ加害者を裁判にかける努⼒を強化すること。
(c) 性的搾取および虐待の被害児が汚名を着せられることと闘うための意識啓発活動を実施すること。
(d) 児童虐待を予防しこれと闘い、かつ被害児の回復と社会的再統合を図るための包括戦略を策定するために、⼦どもたちが関与する教育プログラムを強化すること。
体罰
25.委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていることに留意する。しかしながら、委員会は以下を深刻に懸念する:
(a) 学校における禁⽌が実効的に実⾏されていないこと。
(b) 家庭および代替的養護の現場における体罰が法律で全⾯的に禁じられていないこと。
(c) とくに⺠法および児童虐待防⽌法が適切な懲戒の使⽤を認めており、体罰の許容性については明確でないこと。
26.委員会は、体罰その他の残虐または品位を傷つける形態の罰から保護される⼦どもの権利に関する⼀般意⾒8号(2006年)に留意しつつ、委員会の前回の総括的勧告(CRC/C/JPN/CO/3 48段落)を想起し、締約国に対し、以下について強く要求する:
(a) 家庭、代替的養護および保育の現場ならびに刑事施設を含むあらゆる場⾯におけるあらゆる体罰を、いかに軽いものであっても、とくに児童虐待防⽌法および⺠法において、明⽰的かつ全⾯的に禁⽌すること。
(b) あらゆる現場で実際に体罰を解消するための処置を強化すること。これには、意識啓発広報活動の強化や、積極的で、⾮暴⼒的かつ参加型の形態の⼦育てと躾の推進を含む。
F.家族環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20~21条、第25条ならびに第27条(4))
家族環境
27.委員会は、締約国が、適切な⼈的・技術的・財政的裏づけのもとで、以下につき必要なあらゆる処置をとるよう勧告する:
(a) 家族を⽀援し強化すること。これには、仕事と家庭⽣活との適切な均衡がとれるよう取り計らう等の⼿段を含み、⼗分な社会的援助・社会⼼理学的⽀援・相談業務を必要な家族に供与し、もって⼦どもの遺棄および施設措置を予防する。
(b) 外国籍の親を含めて、⼦どもの最善の利益に合致する場合には、⼦どもたちの共同監護権を許容するように離婚後の親⼦関係を規定する法律を改正するとともに、⾮同居親との個⼈的関係および直接の交流を維持する⼦どもの権利が定期的に⾏使できることを保障する。
(c) 例えば⼦どもの扶養費に関するような家事紛争における裁判所命令の法執⾏⼒を強化すること。
(d) ⼦およびその他の親族の扶養費の国際的回収に関する2007年11⽉23⽇のハーグ条約、扶養義務の準拠法に関する2007年11⽉23⽇のハーグ議定書、および、親責任および⼦の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執⾏および協⼒に関する1996年10⽉19⽇のハーグ条約の批准を検討すること。
家族環境を奪われた⼦どもたち
28.委員会は、家族を基盤とする養育の原則を導⼊した2016年の児童福祉法改正、および、6歳未満の⼦どもは施設に措置されるべきではないとする2017年の新しい社会的養育ビジョンの承認に留意する。しかしながら、委員会は以下について深刻に懸念する:
(a) 多数の⼦どもたちが家族から引き剥がされているとの報告があり、その引き剥がしは司法令状のないままですることができ、しかも児童相談所に最⼤2ヶ⽉間収容されることになること、
(b) 多数の⼦どもたちが、不適切な⽔準にあり、児童虐待の事案が報告されており、しかも外部による監督と評価の機構がない施設にいぜんとして収容されていること、
(c) 児童相談所がより多くの児童を受け入れることに対する強力な金銭的インセンティブを有する疑惑があること。
(d) ⾥親に包括的な⽀援、適切な訓練と監督が与えられていないこと、
(e) 施設措置された⼦供たちが、その⽣みの親との接触を維持する権利を剥奪されていること、
(f) 児童相談所は、⼦供の⽣みの親がその⼦どもを引き剥がすことに反対した際、もしくは児相の措置に関する決定が児童の最善の利益に反するときに、家庭裁判所にその事案を申し⽴てるよう明確に指⽰されていないこと。
29.⼦どもの代替的養護に関する指針[国連総会決議64/142]に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国に対し、以下を強く要求する:
(a) ⼦どもが家族から引き剥がされるべきか否かの決定に際して、義務的司法審査を導⼊し、⼦どもの引き剥がしについて明確な基準を設定し、そして⼦どもたちを親から引き離すのは、それを保護するため必要で⼦供の最善の利益にかなっているときに、⼦供とその親を聴聞したあと、最後の⼿段としてのみなされるのを保障すること、
(b) 明確な⽇程表をもとにした「新しい社会的養育ビジョン」の迅速かつ効果的な執⾏、6歳未満の⼦どもを⼿始めとする⼦どもの速やかな脱施設化および⾥親機関の設置を保障すること。
(c) 児童相談所において⼦どもたちを⼀時保護するやり⽅を廃⽌すること、
(d) 代替的養護の現場における⼦どもの虐待を予防し、これらの虐待について捜査を⾏ない、かつ虐待を⾏なった者を訴追すること、⾥親養育および児童相談所のような施設的状況における⼦どもの措置について独⽴した外部審査を定期的に⾏なうことを保障すること、ならびに、これらにおける養護の質について、⼦どもの不当な取扱いの通報・監視および是正のためすぐに使えて安全な通報先を提供する⼿段などによって、これを監視すること、
(e) 財源を施設から⾥親家族のような家族的環境に振り向け直すとともに、すべての⾥親家庭が包括的な⽀援・⼗分な研修および監視を受けることを確保しながら、脱施設化を実⾏する⾃治体の能⼒を強化し、かつ同時に家庭を基盤とする養育体制を強化すること、
(f) ⼦どもの措置に関する実親の決定が⼦どもの最善の利益に反する場合には家庭裁判所に申⽴を⾏なうよう児童相談所に明確な指⽰を与えるため、⾥親委託ガイドラインを改正すること。
養⼦縁組
30.委員会は、締約国に以下を勧告する:
(a) 養⼦となる⼦どもまたは保護者の直系親族によるものを含むすべての養⼦縁組が裁判所による許可の対象とされ、かつ⼦どもの最善の利益にしたがって⾏なわれることを保障すること、
(b) 養⼦とされたすべての⼦どもを登記簿につけ、かつ国際養⼦縁組を扱う中央当局を設置すること、
(c) 国際養⼦縁組についての⼦の保護および協⼒に関するハーグ第33号条約(1993年)の批准を検討すること。
不法な移送および不返還
31.委員会は、締約国が、⼦どもの不法な移送および不返還を予防しかつこれと闘い、国内法を国際的な⼦の奪取の⺠事上の側⾯に関する1980年のハーグ条約と調和させ、かつ、⼦どもの返還および⾯会交流権に関する司法決定の適正かつ迅速な実⾏を確保するため、あらゆる必要な努⼒を⾏なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、関連諸国、とくに締約国が監護または⾯会交流権に関する協定を締結している国々との対話および協議を強化するよう、勧告する。
G.障碍、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)〜(3)および第33条)
(中略)
I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)〜(d)および第38〜40条)
亡命申請中、移住および難⺠の⼦どもたち
42.国際移住という情況にある⼦どもたちの⼈権についての、全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する委員会の⼀般意⾒3号および4号(2017年)/⼦どもの権利委員会の⼀般意⾒22号および23号(2017年)の合併⼀般意⾒を想起しつつ、委員会は、前回の総括所⾒(CRC/C/JPN/CO/3 78段落)を想起し、締約国に以下を勧告する:
(a) その⼦どもたちに関連するすべての決定において⼦どもの最善の利益が最重要に考慮され、かつノンルフールマン原則[迫害の危険に直⾯する国への送還からの保護]の堅持を保障すること、
(b) 亡命申請中の親が収容され⼦どもたちから切り離されることを予防する法的枠組を確⽴すること、
(c) [保護者に]伴われていないか養育者から切り離された亡命申請中ないしは移⺠の⼦どもの収容を予防し、このような⼦どもたち全員を⼊管収容施設から直ちに解放することを保障し、かつこれらの⼦どもたちに居住場所、適切な養護および教育機会を提供するために、公式な機構設置等も通じた処置を直ちにとること。
(d) 亡命申請中および難⺠とくにその⼦どもたちに対するヘイトスピーチに対抗するための広報活動を展開すること。
売買、取引および誘拐
43.委員会は、締約国に以下を勧告する:
(a) ⼦どもの⼈⾝売買の加害者を裁判にかけるための努⼒を強化し、⼦どもの⼈⾝売買の罪に対する処罰を強化し、かつ罰⾦をもって刑に代えることを認めないこと。
(b) ⼈⾝売買被害を受けた⼦どもが適正に特定され、かつ⾏政に紹介されることを確保するため、被害者の調査検討を強化すること。
(c) ⼈⾝売買被害を受けた⼦どもに対する、住む場所ならびに⾝体的・⼼理的回復およびリハビリテーションのための⼦どもにやさしい包括的な援助を含む、特別な養護と援助の資源を増加させること。
少年司法の運営
44.委員会は、再犯防⽌推進計画(2017年)に留意する。しかしながら、委員会は以下について深刻に懸念する:
(a) 「刑事処罰に関する最低年齢」が16歳から14歳に引き下げられたこと、
(b) 弁護⼈をつける権利が制度的に実⾏されていないこと、
(c) 重罪を犯した16歳を超える⼦どもたちが成⼈刑事裁判所に送致されることがあること、
(d) 14~16歳の⼦どもが矯正施設に拘禁されることがあること、
(e) 「虞犯」少年とされた⼦どもたちがその⾃由を剥奪される場合があること、
(f) ⼦どもたちに終⾝刑が科されており、かつ、仮釈放までに必要な最低期間よりも相当⻑く拘禁されるのが⼀般的であること。
45.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約ならびにその他関連規準に全⾯的にならうものとすることを強く要求する。とくに委員会は、前回の総括所⾒(CRC/C/JPN/CO/3 85段落)を想起し、締約国に対し、以下を強く要求する:
(a) ⼦どもが罪を犯す根本的諸原因について研究し、予防処置を緊急に実⾏すること、
(b) 「刑事処罰に関する最低年齢」をふたたび16歳に戻すことを再検討する情報とするため、2000年以降の⼦どもの犯罪傾向を研究すること、
(c) 法律に抵触した⼦どもたちに対し、⼿続の早い段階で、かつ法的⼿続全体を通じて、有資格者による独⽴の⽴場からの法的援助の提供を保障すること、
(d) いかなる⼦どもも成⼈刑事裁判所による審理の対象とされないことを保障するとともに、刑法上の罪に問われた⼦どもたちの事件において、司法前処理・保護観察・調停・カウンセリング・または地域奉仕活動など、⾮司法的処置の利⽤を増やし、かつ可能な場合にはいつでも、拘禁によらない刑を宣告すること。
(e) 審判前および審判後の⾃由の剥奪が、最後の⼿段としてかつ可能なもっとも短い期間で⽤いられ、かつ、その取消しを視野に⼊れて定期的に再審査されることを保障し、とりわけ、
(i) 「虞犯」少年認定について⾒直し、かつこのような⼦どもたちの拘禁を⽌めること。
(ii ) ⼦どもたちが⾏なった犯罪について、終⾝刑および不定期刑を⽤いることを⾒直し、かつ、最短の適切な期間のあいだ拘禁されることを保障するために、特別な仮釈放制度を適⽤すること。
⼦どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所⾒以降の対応
46.⼦どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国報告書についての2010年の委員会の勧告(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1参照)を実施するために締約国が⾏なった努⼒には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国に以下の勧告をする:
(a) 明⽰的に性的な活動に従事する⼦どもたち、または主として⼦どもたちとして描かれている者の画像および表現、または性的⽬的で⼦どもたちの性的部位を描いたあらゆる表現の製造・配布・発信・提供・販売・アクセス・閲覧・所持を犯罪化すること、
(b) 「⼥⼦⾼⽣サービス」や児童エロチカのような、児童買春および⼦どもたちの性的搾取を促進しまたはこれにつながる商業活動を禁⽌すること,
(c) 加害者の責任および被害児童の救済を保障するため、オンラインおよびオフラインにおける⼦どもたちの売買、児童買春および児童ポルノに関連する犯罪を捜査し、訴追しかつ処罰するための努⼒を強めること、
(d) 性的虐待および搾取の被害児童に焦点をあてた良質で統合的なケアおよび援助を提供するため、ワンストップ危機センターへの資⾦および⽀援を引き続き増やすこと、
(e) ⽣徒・親・教員・および養護に従事する者を対象とした、新たな技術に関連するリスクおよび安全なインターネットの利⽤に関する、広報宣伝活動も含む意識啓発プログラムを強化すること、
(f) ⼦どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が⾏った勧告(A/HRC/31/58/Add.1、74段落)を実⾏すること。
武⼒紛争への⼦どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所⾒以降の対応
47.武⼒紛争への⼦どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国報告書についての2010年の委員会の勧告(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)を実⾏するために締約国が⾏なった努⼒には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国が、選択議定書の諸規定に関する⽇本の⾃衛隊を対象とした研修を、とくに⾃衛隊が国連平和維持活動に参加する際に、引き続き強化するための具体的処置をとるよう勧告する。
J.通報⼿続に関する選択議定書の批准
48.委員会は、締約国が、⼦どもの権利がさらに⼗分満たされるようにする⽬的で、通報⼿続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。
K.国際⼈権⽂書の批准
49.委員会は、締約国が、⼦どもの権利がさらに⼗分満たされるようにする⽬的で、締約国がまだ加盟していない以下の中核的⼈権⽂書の批准を検討するよう勧告する:
(a) 市⺠的および政治的権利に関する国際規約の第1選択議定書。
(b) 死刑の廃⽌を⽬指す、市⺠的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書。
(c) 経済的、社会的および⽂化的権利に関する国際規約の選択議定書。
(d) ⼥性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書。
(e) 拷問および他の残虐な、⾮⼈道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書。
(f) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約。
(g) 障害のある⼈の権利に関する条約の選択議定書。
L.地域機関との協⼒
50.委員会は、締約国が、とりわけ東南アジア諸国連合の⼥性および⼦どもの権利の促進および保護に関する委員会と協⼒するよう勧告する。
IV.実施および報告
A.フォローアップおよび普及
51.委員会は、締約国が、この総括所⾒の内容となっている諸勧告の全⾯的実⾏を保障するため、あらゆる適切な処置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4・5回統合定期[政府]報告書、求釈明書に対する⽂書回答およびこの総括所⾒を同国の⾔語で広く⼊⼿できるようにすることも勧告する。
B.報告およびフォローアップのための国内機構
52.委員会は、締約国が、国際および地域⼈権機構への報告書を統括し作成すること、ならびにこれらの機構に関与すること、そして、条約上の義務ならびにこれらの機構から出された勧告および決定を国内でフォローアップし、その実⾏を統括し追跡することを任務とする常設の政府機関として、報告およびフォローアップのための国内機構を設置するよう、勧告する。委員会は、このような機関が専任の職員によって適切かつ継続的に⽀えられるべきであり、かつ、市⺠社会と組織的に協議する能⼒を持つべきことを強調する。
C.次回の報告
53.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期[政府]報告書を2024年11⽉21⽇までに提出し、かつ、この総括所⾒のフォローアップについての情報を当該報告書に含めるよう招請する。報告書は、2014年1⽉31⽇に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、か21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268 第16段落参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を⾒直し再提出する⽴場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
54.委員会はまた、締約国に対し、国際⼈権諸条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別⽂書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6 第I章参照)および総会決議68/268の第16段落にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも招請する。