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本年4月から、「一時保護状」がいよいよ試行されます!

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「⼀時保護時の司法審査に関する児童相談所の対応マニュアル(案)の重⼤な問題点」について、弊会代表が、2024年2月20日、次の文書を発出しましたので、ご紹介します。

緒 言

こども家庭庁は、「⼀時保護時の司法審査に関する対応」について、2022 年の児童福祉法改正を踏まえ、本年4⽉からの「⼀時保護状」導⼊に際して国(こども家庭庁)が指⽰を与える、児童相談所向けマニュアル案を発表した:

このマニュアル案は、児相被害者家族が横浜地裁に起こした訴訟(令和4年(ワ)第 1473 号)判決において、「『 ⼦ども虐待対応の⼿引き』は、都道府県等に対する地⽅⾃治法245 条の第1 項の規定に基づく技術的助言であり…一般的な尊重義務はあるものの、都道府県等を法的に拘束するものではな」い、と判⽰(判決書4〜5⾴)されているものと同じ性格の⽂書であり、該訴訟において被告国⾃⾝も、「技術的助⾔であって、地方公共団体を法的に拘束するものではなく、これに従うよう強要するものではない」と認めている。それゆえ、各児童相談所は、この「マニュアル」が実施された場合においても、それを法的拘束⼒ある⽂書と扱う必要は無く、裁量が認められていることを認識しておくべきである。

とはいえ実際のところ、多くの都道府県等において児相職員がこれに盲⽬的に付き従う傾向が⽣ずると思われるので、このマニュアル案について児相被害者の⽴場からしっかり検討しておくこととしたい。

⽇本の児相被害者の怒りが国連⼦どもの権利委員会に届いてできた「一時保護状」

マニュアル案は、「国連児童の権利委員会[=⼦どもの権利委員会]による⽇本政府に対する総括所⾒においては 、 『児童を家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導⼊ すること』が要請されるとともに、社会保障審議会児童部会社会的養育専⾨委員会において令和4年2⽉に とりまとめられた報告書では、⼀時保護の開始に関し、より⼀層の判断の適正性や⼿続の透明性を確保する必要があるとして、『独⽴性・中⽴性・公平性を有する司法機関が⼀時保護の開始の判断について審査する新たな制度を導⼊する』ことが⽰された」と述べている(3⾴)。国連総括所⾒の発出は2019 年3⽉、社会福祉審議会の報告書発出はその3年後であるから、明らかに、この「一時保護状」導入は、国連子どもの権利委員会勧告を直接のきっかけにしたものといえる。

2018〜2019 年に開催された国連⼦どもの権利委員会には、児相被害を撲滅する会を含む2つの⼦どもの⼈権団体が⽇本の児童相談所の⼈権侵害について厳しい代替報告書を提出しており、該総括所⾒は⼦供の権利委員がそこにもられた児相被害者の声を踏まえて発出された。つまり、「⼀時保護状」導⼊は、児相被害者がグローバルなスケールで国連の⼒を求め児童相談所と闘った戦果である。児童相談所問題解決にあたっての国連の役割はこのように⽴証済みで、児相問題は国内問題だからとして国連との連携を忌避する姿勢では、⽇本国内の児童相談所による⼈権侵害は、⼀向に解決しないであろう。

「⼀時保護状」導⼊の原因となった国連子どもの権利委員会2019 年対日勧告29(a)は、次のようなものである(外務省訳、太字は弊会による):

児童を家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導⼊すること,児童の分離に関する明確な基準を定めること及び親からの⼦の分離が最後の手段としてのみ,それが児童の保護のために必要かつ子どもの最善の利益に合致する場合に,子及びその親の意見を聴取した後に⾏なわれるよう確保すること。

ところが残念なことに、このたびの「⼀時保護状」は、国連⼦どもの権利委員会勧告の精神をきちんとふまえているとは到底いえないし、勧告の具体的内容に誠実に従っているとは⾔えない。このため、全く同⼀内容の勧告が、2022 年の国連⼈権委員会からもなされ、こちらではさらに児童福祉法の再改正が求められていて、2025年11 月までにその経過・結果を報告するよう要求されている。

そこで以下、このマニュアル案にそくして、国連⼦どもの権利委員会勧告29(a)と対照しつつ、このマニュアル案の問題を掘り下げることとする。

2. 「⼀時保護事後の申請を認めている問題

国連勧告は「児童を家族から分離するべきか否かの決定」について司法審査を求めているのであるから、この司法審査は当然「⼀時保護」に先⽴ってなされなければならないこととなる。すなわち、「⼀時保護状」の事前申請が必須とされるべきである。

ここで、マニュアル案第⼀の問題が浮かび上がる。すなわち、「児童の⽣命・⼼⾝の安全を迅速に確保して適切な保護を図るなどの⽬的で⾏われる⼀時保護の実情に照らせば、事後請求が多数を占めると予想される」(30 ⾴)と、事後請求を当然視していることである。そしてマニュアル案は、事前請求ができる場合を具体的事例によって局限しており(30 ⾴)、児童相談所を事後請求する⽅向に誘導している。

もし、「児童の⽣命・⼼⾝の安全を迅速に確保」するというのが事後請求を正当化する理由であるならば、「児童の⼀時保護を⾏う」ことができる場合を挙げた児童福祉法施⾏規則34 条の4(マニュアル案7頁に掲載)に関し、第7号以外は「⼀時保護を⾏う場合に『児童の⽣命⼜は⼼⾝に重⼤な危害が⽣じるおそれ』が必要となるものではない」(26 ⾴)と明⽰的に述べ、児童の⽣命または⼼⾝に危害が無くても「⼀時保護」を求めているところと著しく⽭盾している。つまり、「児童の生命・心身の安全」というのは、児相拉致を正当化するための欺瞞と考えるほかない。

3.  全親権者の同意がある場合に、⼀時保護状は不要とされている問題

「当該⼀時保護を⾏うことについて児童の親権を⾏う者⼜は未成年後⾒⼈(以下「親権者等」という。) の 同意がある場合」(3 ⾴)には「⼀時保護状」は不要とされている。だが国連が勧告しているのは「義務的司法審査」であり、⼀時保護の全件について司法審査がなされることを当然に求めている。ただし、マニュアル案には「同意が判然としない場合…には、同意があるとは言えないものとして一時保護状の請求を行う」(34 ⾴)としているので、最愛の我が⼦が児相拉致されたのち、親が黙っていれば「暗黙の同意」とみなして「⼀時保護状」の請求を児相が⾏わないことは認められていない。その場合に⼀時保護状が請求されなかったなら、親側は児相の違法⾏為を裁判などで追及すべきである。

マニュアル案によれば、ここで「親権者の同意」という場合、全ての親権者が同意する必要がある(28 ⾴)。従来、離婚を視野に⼊れて親権確保のため配偶者による「虐待」をでっちあげて⼦供を児相に拉致・⼈⾝拘束させるという⼿⼝をとる連れ去り親がいたが、これからは、我が⼦を連れ去られた親が「⼀時保護」不同意を表明すれば、児相に「⼀時保護状」請求をさせることができることになる。⺠法改正後、離婚後共同親権となった場合も同様である。
いずれにせよ、我が⼦が児相拉致された場合、親側は、躊躇わず不同意を明示的に表明することが重要である。

 4.  「⼀時保護要件が余りに融通無碍で、基準が明確でない問題

国連勧告は、児童相談所の⼀時保護を「児童の分離に関する明確な基準を定めること及び親からの⼦の分離が最後の⼿段としてのみ,それが児童の保護のために必要かつ⼦どもの最善の利益に合致する場合」に限ることを求めている。

ところがマニュアル案では「児童虐待のおそれがあるとき、少年法(昭和 23 年法律第 168 号)第6条の6第1項の規定により事件の送致を受けたときその他の内閣府令で 定める場合 に該当し (以下「 府令該当性 」という。)」、かつ「必要があると認めるとき(以下「⼀時保護の必要性」という。)」に、裁判所は⼀時保護状を発⾏するものとしている。「児童虐待防⽌法第⼆条に規定する児童虐待を受けた場合若しくはそのおそれがある場合」(7⾴)と、その幅を著しく広げている。これでは「なんでもあり」となってしまい、国連が求める「児童の分離に関する明確な基準」には程遠い。

そして、「⼀時保護を⾏う場合に『児童の⽣命または⼼⾝に重⼤な危害が⽣じるおそれ』が必要となるものではない」(26⾴)として、「児童を家庭から⼀時分離して親⼦関係を調整する必要がある場合」「福祉サービスの利⽤等により養育環境を整える必要がある場合」(同)など、どう考えても親子を切り離す必要が無い場合にさえ、「一
時保護の必要性」を認めている。そして児童福祉法33 条1項には依然として「児童の⼼⾝の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」という、実際には虐待が無くとも調査目的のみで「⼀時保護」を「アセスメント保護」(8⾴)として許容すべきことを求めている。「児童虐待を受けたおそれ」がある場合、すなわち明確な「虐待」の証拠が無い場合についても、「⼀時保護」を⾏なえと指⽰している(10⾴)。この「おそれ」には、例⽰として、「特定妊婦」指定に繋がる要因等、あるいは、きょうだいの⼀⼈が「⼀時保護」された場合の残りの⼦どもたちの⼀時保護等が挙げられている(14〜15 ⾴)。つまり、複数の⼦供がいる家族において「⼀時保護」をそのうち⼀⼈について⾏ないさえすれば、虐待されてもいないのに他の⼦供も芋づる式に「⼀時保護状」を裁判所に発付させ、兄弟姉妹を一網打尽に児相拉致せよとする⽰唆さえなされているのである。これらのことから、マニュアル案が、児童相談所による親⼦分離を規制し、「最後の⼿段」の場合のみに親⼦分離を⾏わせようとするのとは真逆に、まさに手あたり次第の児相拉致に対し「一時保護状」を乱発させるよう要求していることがわかる。

マニュアル案は、児福法「改正前後において、児童相談所⻑等が⼀時保護を⾏うことができる場合についての考え⽅が変わるものではなく、前記のような趣旨に基づき、その要件が具体化されたもの」にすぎない(6⾴)と述べるが、この「要件の具体化」は、児童相談所のこれまでの「⼀時保護」における悪しき慣⾏が書⾯によって
追認されたものを含んでいるどころか、マニュアル案に掲げられた具体的事案の⽰唆、ならびに「前各号に掲げるもののほか、⼀時保護を⾏わなければ児童の⽣命⼜は⼼⾝に重⼤な危害が⽣じるおそれがある場合」という新たな項⽬が(児童福祉法施⾏規則第34 条の4)に加えられて(26 ⾴)、児相拉致の投網はさらに拡大し、子どもたちが家族から次々と引き剥がされ、児相被害者が増大する危惧を孕んでいる。

これらのことは、少⼦化の中で社会的養護利権を維持するにはなるほど必要であろうが、「一時保護状」という外面だけを繕って、国連勧告が児福法33条の「⼀時保護」における国際⼈権条約違反を指摘している精神をこども家庭庁があえて無視していることを⽰している。むしろそれに抗って、家族からできるだけ多くの⼦どもたちを引き離し、それを社会的養護に回して施設のベッドを埋めたり特別養⼦縁組の素材に使うという、「子どもの商品化」・利権をさらに拡大しようとする考え方が顕著というべきである。
⼀⽅、「⼀時保護状」を発付しない「明らかに⼀時保護の必要がないと認めるとき」(6⾴)については、具体的にそれがどのような場合であるかについて、マニュアル案に説明も事例の提⽰も⼀切無い。そして、「府令該当性があると認めるときは、明らかに⼀時保護の必要がないと認めるときを除き、⼀時保護状を発付するものとする」(4⾴)として、マニュアル案は、裁判官による⾃由な裁量の余地を著しく狭め、事実上あらゆる場合に「⼀時保護状」を発付せざるを得ない状況に裁判官を追い込んでいる。

このマニュアル案の発想は、実親とその子との切り離しは最少化・最短化すべきであるという、国際的な人権法の考え方と正面から対立する。児童養護施設に⼦供を⻑期間にわたり⼊所させること⾃体が、発達権を侵害する児童虐待であるという主張は海外でなされており、⽇本にも紹介されている。例えば、こちらを参照:
https://note.com/seven_seass/n/n38f57e13f3b2

そこで、「一時保護の必要がないと認めるとき」とは具体的にどのような場合であるかについて、こども家庭庁支援局虐待防止対策河村のり子課長に確認したところ、一時保護の必要が無い場合とは、例えば、親子分離しなくても、虐待を防ぐための在宅指導が可能な場合、という回答であった。これはたしかに、国際人権規範にある補完性原理、すなわち複数の方法(保護と在宅指導の二択のように)がある場合には子どもと家族への侵襲性が最少の保護措置をとることとし、子どもの親からの切り離しは最後の手段とすべきであるという規範を踏まえた、「こどもまんなか」と言える措置だ。

なお、「⼀時保護状」と直接の関係はないが、本マニュアル案が児童虐待防⽌法第2条がいう「保護者」の定義を、実親にとどまらず、⾥親や児童養護施設⻑に拡張している点は、注⽬に値する(10 ⾴)。

5.  ⼦どもと親の意⾒を軽視・蹂躙した⼀時保護が強⾏される問題

こども家庭庁が尊重すると称する国連⼦どもの権利条約が、その12 条で子どもの意見表明権を尊重すべきことを規定しているのは、知られる通りである。本マニュアル案において、それは実⾏されているであろうか。

国連は、その⼦どもの権利委員会勧告29(a)で、「⼀時保護」に関わることとなった⼦供と親について「意⾒の聴取」をするよう求めている。ところがマニュアル案においては、「⼀時保護時の司法審査は児童相談所⻑等が提供する資料に基づいて迅速に書面審査を⾏う⼿続である」(37 ⾴)とするのみで、⼦どもと親が切り離されるかどうかという家族にとって重⼤な局⾯であるにも拘らず、認めているのは、⼦どもならびに親が児童相談所に意⾒を⾔ってそれを⼀時保護状請求書⾯に記載するか、あるいは⼦供ならびに親⾃⾝が書⾯を準備してそれを児相経由で裁判所に提出することだけである。「⼀時保護」はほとんどの場合⼦どもたちならびに親にとって重⼤な不利益処分であるが、⾏政⼿続法が定める「聴聞」の機会は、子どもについても親についても全く認められていない。

なお、親の書⾯提出が認められたのは、「⼀時保護状」を巡る議論の中で、児相被害者側から裁判所が親の意⾒を聴取すべきであるとの批判が出された成果であろう。

⼦供の意⾒表明についてマニュアル案がさらに問題なのは、実際に「⼀時保護」をうけることになる⼦どもの「意⾒聴取等措置は、原則として児童相談所の職員が実施する」(38 ⾴)としていることである。「⼀時保護」という、多くの場合発達権や親の養育を受ける権利の侵害など、⼦どもにとって結果的に不利益となり得る処分を加える当事者に⼦供と親の意⾒聴取をさせるというのであるから、中⽴性はゼロで、「⼀時保護状」を裁判所から得ようとして、児相職員の処置を⼦どもが⽀持しているかのように子どもたちの発言が恣意的に歪曲されることは想像に難くない。
また、⼦どもや親が直接書⾯を提出できると⾔っても、マニュアル案は、その書⾯に、児童相談所側が「経過記録等を⼀時保護の経緯等の事実関係や 児童相談所の所⾒を裏付ける資料として 提供することを妨げるものではな」い(46 ⾴)としており、⼦どもや親の意⾒表明への批判的所⾒を児相側が付し、⼦どもや親の意⾒表明の有効性を損おうとする事態も⼗分に予想される。しかも、⼦どもと親は、この児相による批判的所⾒の書⾯に対し反論することが⼀切できない。マニュアル案は「児童の求めに応じて、意⾒表明等⽀援員が⽀援したり、必要に応じて児童の意⾒等を代弁したりする」⽅法も⽰唆(38 ⾴)しているが、意⾒表明等⽀援員(アドボケイト)⾃体が、児相弁の関係先から派遣されるなど児童相談所と結びついた存在であって、これにも中⽴性が担保されていない。

しかも、このような不完全で歪曲された形で聴取された⼦どもの意⾒さえ、マニュアル案は蹂躙を厭わない。すなわち、⼦ども⾃⾝が児童相談所に保護を求めながら、その後翻意して帰宅を求めた場合、「背景事情の把握を⾏う必要がある限り、…⼀時保護を継続することができる」(21 ⾴)とし、子ども本人の意思に反して人身拘束を継続することを許容している。⼦ども本⼈が⼀時の出来⼼で児相に駆け込んだが、その後翻意したにも拘らずその意思に反して児相が⼈⾝拘束を継続し、更に施設措置にまで⾄る事例は各地で報告されており、これが⼦供の意⾒表明権の重⼤な蹂躙であることは論を俟たない。

このように⼦どもと親の意⾒表明を軽視して児童相談所が請求した⼀時保護状の審査過程に⽤いた書⾯や証拠等について、子どもと親が「裁判所に対し、その閲覧謄写を求めることはできない」(46 ⾴)。家族⾃らに関わる重要な決定であるにも拘らず、その情報のアクセスは個⼈情報保護法による個⼈情報開⽰請求によるしかなく、それを開⽰するか否かは児童相談所の裁量にゆだねられていて、「ノリ弁」と称される⼀⾯墨消しの紙が家族側に提供されるのみとなる場合がある。

すなわち、児相によるこの「⼀時保護状」請求過程の⼤半は、⼦どもと家族にとってブラックボックス化されているのである。

6. 「不服申⽴⼿続が⼦どもや親には認められない問題

マニュアル案の第4章には、「⼀時保護状」請求に対する裁判所への「不服申⽴⼿続」が詳しく説明されている。常識的に考えれば、「⼀時保護」に対し不服申⽴するのは「⼀時保護」を受け、しかも⼀時保護状を発付されそうになってその⼈⾝拘束が法的に正当化されようとしている⼦供や親など家族側であろう。ところが、「一時保護状」について不服申し立てが可能なのは、児童相談所側だけという、いかにも奇妙な制度になっている。

この不服申⽴の要件は、「⼀時保護を⾏わなければ児童の⽣命⼜は心身に重⼤な危害が⽣じると⾒込まれるとき」とされており、明確な証拠がない「精神的虐待」であっても不服申し⽴てができる。つまり、申請⼈の⾏政機関である児童相談所側が中⽴であるべき司法機関の判断を事実上恣意的に覆す法的⼿段を持っていることになる。

更に重大なのは、マニュアル案が「…一時保護時の司法審査を行う裁判官は、…児童相談所長等の判断を尊重すべき」(6頁)とし、裁判官に児相の意向の尊重を要求して、日本国憲法76条で保障されている司法の独立を裁判所から奪っていることである。マニュアル案はその理由として「一時保護の必要性については、児童の福祉に関する専門的な判断の必要性から、その知見等を有する児童相談所長等の合理的な裁量に委ねられて」(6頁)いることを挙げるが、現実に児童相談所長が常にそのような「専門的な判断」をする知見を有している訳でないことは、数々の事案で既に明らかである。それにも拘らずマニュアル案がなしたこの違憲な要求により、「一時保護状」発付は、第三者の監視のもとでではなく、ますます有名無実の、児童相談所の決定を単に裏書して権威を与えるだけの制度になり果てている。

これにより「⼀時保護状」発付は、第三者の監視のもとでではなく、ますます有名無実の、児童相談所の決定を単に裏書して権威を与えるだけの制度になり果てている。

これは、国連⼦どもの権利委員会が求める親⼦切り離しの際に担保されるべき公正性・謙抑性とは全く異質の⼿続きであるというほかない。またマニュアル案は、⼦どもや親側からの不服申⽴⼿続きについては、全く説明していない。「⼀時保護状」発付⼿続きの枠組みにおいて、親側からの不服申し⽴てはできないのである。

ただし、マニュアルには記されていないが、厚労省の「一時保護開始時の司法審査等について(案)」は、この一時保護状について、一時保護状発出手続きの枠外で、親権者が2週間以内に即時抗告する権利があることを認めている(この文書の13頁)。

この即時抗告手続により、裁判所が独自の判断で一時保護の取り消しを認める司法判断が多くなれば、児童相談所には戦前の特高と同じ特別権力関係が付与されているとする状況は、多少なりとも緩和されるだろう。それゆえ我が子を奪われた児相被害者は、権利を行使し、一時保護状の発付の決定に対し積極的に即時抗告で対抗することが求められる。

7.  結 語

このように本マニュアル案は、いかにも国連⼦どもの権利委員会勧告を踏まえるようなそぶりを⽰しながら、その実、かえって、この勧告を奇貨として、これまで厚労省=児童相談所が⾏なってきて国連勧告にまで⾄った、社会的養護利権確保と拡⼤のため、少⼦化にも拘らずさらに多くの⼦どもたちを家族から収奪することを制度的に強化・可能にしようとする企図を強くにじませている。それによってこども家庭庁は、家族の破壊と⼦どもたちへの⼈権侵害をさらに強めようとしているのである。

これに対し国連⼈権委員会は、上述の通り、2022 年に、すでにこの⽇本政府が企図している「⼀時保護状」が国連⼦どもの権利委員会の2019 年勧告にそぐわないものであることを認識し、⽇本政府に児童福祉法の再改正を求め、改正⼿続きに⼊ったうえ、2025 年11 月までにその状況を国連に報告するよう勧告している(45 項)。こ
のことからすれば、国連⼦どもの権利委員会勧告の趣旨に正⾯から対決するというべきこのマニュアル案が国際⼈権法によって規律される国連⼈権諸委員会に知られれば、⽇本政府は「中世並み人権国」(⼈権三流国家)との評で国際社会から益々貶められるだろう。あたかも国内の利権を護ろうとして連合国に⽵槍で挑戦し、最後には敗戦を余儀なくされるごとき愚行の象徴というべきである。

ただ、本マニュアルは、児相被害者に対し、児相による恣意的な最愛の我が子の拉致に対し、より制度的な対抗の手立てを与えたことも事実である。児相は「一時保護」ではなく在宅指導で足りたはずなのに「一時保護」に及んだこと、すなわちマニュアル案に書かれている「一時保護の必要がないと認めるとき」に該当するとして、一時保護状の発付取り消しを求め即時抗告するという親権者側の積極的姿勢が不可欠となる。

【編集履歴】
2024年3月6日: こども家庭庁虐待防止対策課長の見解、一時保護状の決定には即時抗告が可能である、等追加、文章修正