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本年4月1日から、18歳で成人。児童福祉法は憲法違反になります!

今年4月1日から、18歳で成人になります。
そして、このことにより、児童福祉法が憲法違反の法律になります。以下、これについて説明します。

成年者を児童相談所長の一存で人身拘束⁉

成年年齢が20歳のとき、児童福祉法の第31条4項は、児童養護施設に措置されていて18歳を越えた児童を、「延長者」として施設措置の継続をしていました。
しかし、民法改正による成人年齢の引き下げによって、18歳以上の「児童」は、本年4月1日から「成人」となります。そこで厚労省は、2018年6月20日に児童福祉法を改悪し、この「延長者」に親権者がいなくなるのをいいことに、成年者への施設入所措置を児童相談所長の一存で出来ると解釈できる法律にしてしまいました。これは、厚労省=児童相談所が、自己責任の下での自己決定権をもつ成人市民を恣意的に公権力により人身拘束できるようにする規定にほかなりません。
これは、いうまでもなく憲法の人権規定に違反しています。また、我が国が批准する国際人権法にも違反しています。
(※ なお、18歳以上の者を新規に児童福祉法33条で「一時保護」することは、4月1日以前も以後もできません。)
成年年齢を18歳に切り下げることを衆議院法務委員会で提案者した上川陽子法務大臣(当時)は、「新たに成年として扱われる若年者の自己決定権を尊重し、みずからその生き方を選択することができるようにする」という積極的意義を強調しました。この「自己決定権」には、「みずから居所を定める、あるいは希望する職業につく、こうしたことができるようになる」(第196回国会衆議院法務委員会議事録、2018年5月11日、2頁)ことが含まれる、としています。
自ら居所を定められる一人前の成年者となった以上、18歳以上の者は、児童相談所という公権力による「措置」すなわち居住場所強制の対象ではありえません。日本国憲法は、第22条で、居住・移転の自由を規定しています。また、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)12条1項は、「合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は…、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。」と規定しています。児童福祉法の対象年齢は、第4条に、18歳に満たない者と規定されています。公権力は、満18歳を過ぎた成年者を、児童福祉法を用いて律することはできません。
ところが従来は、この対象年齢規定は、民法の成年年齢である満20歳と齟齬をきたしていました。このため、児童福祉法は、31条4項で、18歳から20歳に達するまでの未成年者を「延長者」として例外的に措置の対象としてきました。このことについて厚労省は、成年年齢が20歳であった平成23年12月28日に、「自立生活能力がないまま措置解除することのないよう18歳以降の措置延長の積極的な活用を図る」ことを求める(雇児発1228第2号)通達を出しています。しかしそれは無制限ではなく、同通達は「満20歳に達するまでの間」と、法31条を引用して最高限度を示しています。この「延長者」の最高限度について、厚労省は「措置延長の時期が二十までになっているということには成年が二十ということは関係している」(第196回国会衆議院法務委員会議事録、2018年5月15日、13頁)としており、最高限度は成年年齢だったことを認めています。
そうであれば、今年の民法改正で成年年齢は18歳に引き下げられるのですから、4月1日を以て児童福祉法の対象年齢と成年年齢は一致することとなり、「延長者」という法概念による措置延長自体が廃止されるべきでした。しかし、そのような廃止はなされませんでした。18,19歳が未成年者だった時の条文が、「社会的養護」業界の利権に都合よく温存されたのです。

成年者への福祉供与は、後見性でなく自律性の原理で

成年者にも勿論、状況に応じ、福祉は供与されるべきでしょう。「自立生活能力がない」というのは、確かにその理由の一つとなります。しかし、18歳が成年者となるのですから、その福祉供与の性格は、未成年者である児童に対するそれとはおのずと大きく異なったものであり、後見性よりも自律性がその原理とならなければなりません。
成年者を含む日本の社会福祉においては、国民の自立性を尊重し、かつ、財政支出の合理化を図る見地から、「措置から契約へ」、「保護の補足性」ならびに「行政経費の抑制」という3つの原理が実行されてきました。
第1に、「措置から契約へ」とは、1999年4月15日に厚生省が発表した政策文書「社会福祉基礎構造改革について」で示されたもので、ここで「個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立」の原則が掲げられました。児童と関わる分野でも、保育所、障碍児等の分野で、行政処分によらず、「利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択する利用制度」への制度改正が進められました。なお、この文書において「要保護児童に関する制度などについては、措置制度を存続」とありますが、18歳が成年となることで18歳以上者は「児童」でなくなりますから、同様にこの基礎構造改革による制度改正の対象となることになります。
第2に、「保護の補足性」とは、生活保護法第4条2項「民法…に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」との規定です。わかりやすくいえば、公的な福祉は、民法による扶養義務者の扶養のあくまで補足として行われるべきだ、という原則です。
第3に、「行政経費の抑制」とは、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律第2条「行政機構の整理及び合理化その他の措置を講ずることにより行政に要する経費を抑制して国民負担の上昇を抑える」要請を社会福祉も満たさなければならないという原則です。これについては、児童養護施設など社会的養護事業も、いうまでもなく例外ではあり得ません。
児童養護施設への措置においても、18歳で成年者となった従前の施設措置を受けていた者に対する福祉供与には、当然、以上3つの原則が適用されなければなりません。
例えば、成年者の「自己決定権」といっても、その成年者が自立しようとした場合に経済的に困難をきたす場合、成年者に対しては、国家権力による居住の自由の制限をともなう、社会的養護施設への「措置」ではなく、生活保護法による生活扶助の供与がなされるべきです。この生活扶助は、「被保護者の居宅において行う」ことが原則で、それ以外の施設等で行う場合であっても「被保護者の意に反して、入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない」と明確な規定(30条)がなされています。そして、保護の補足性の原則からして、それに先立ち、民法877条に基づく家族の絆による扶養義務者の扶養(直系血族の扶養義務)の可能性が考慮されなければなりません。民法877条に基づく扶養義務は、成年者となった子に対しても適用されます。
同時に、18歳以上の成年者への福祉給付は、児童養護施設等サービス供与機関との間の自発的契約原則により、行政経費抑制の観点からサービス供与は基本的に有償とされるべきです。
以上の成年者に対する社会福祉サービス供与の原則は、憲法第13条前段が定める成年者の自律性だけでなく、家族の自律性という観点からも言うことができます。日本が批准している経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第10条1項は、社会の自然かつ基礎的な単位である家族」に対する国の援助義務を規定し、また市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)23条1項もまた、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する」としています。家族の自律権尊重とそれに対する国の援助義務は、国際的な人権規範として承認されており、厚労省も児童相談所もその遵守義務があるのです。親が、民法877条に従って成年者となった我が子を扶養したいと望んだ場合、児童相談所はそれを撥ねつけて施設措置を強行することは許されないはずです。
ところが厚労省は、18歳以上の成年者に、後見的な「福祉」を口実に用いて、憲法が保障する居住の自由や家族の自律権など市民の自由権を犠牲にし、行政による児童養護施設への強制的収容措置を採ろうとしています。これは、「社会的養護」利権への不当な忖度というべきものです。

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司法関与がない成年者の施設措置手続は、憲法31条違反

児相被害者ならよく知っているように、長期の施設入所措置を開始するにあたり、親権者が施設措置に不同意の場合には、親権者を児童福祉法28条による司法審査手続に関与させて、家庭裁判所における承認を必要とする、と規定しています。
親権者に司法手続への関与させることとした趣旨は、子ども・子育て支援法第2条が「子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」と規定する通り、子の養育環境を整えることについて第一義的に責任を負うのが親権者であることに着目したものです。児童福祉法が親を手続への関与を認めたのは、子が未成年であるため単独で有効に権利行使できない子に代わって親にこれを認めるという趣旨ではありません。
そもそも、児童福祉法28条による施設措置において2年ごとに家庭裁判所における承認を必要とした趣旨は、専門的な知見を有する家庭裁判所に、児童相談所が主導的に担う措置の、先行する措置期間における生活状況や再統合義務の達成状況を、親権者に代る第三者として厳しく審査させる点にあります。28条措置では、施設措置への親権者の同意がなく、親権と対立する不利益処分として分離が続いているのですから、施設措置に同意しない親に代わって、施設が子にとって家庭より優れた養育環境であるか否かなど、児童養護施設での養育状況の評価並びに再統合義務の達成状況を司法がしっかり審査しなければなりません。これらの状況が思わしくない場合には、「さらなる措置の延長を承認しない」という司法判断を下せば、国際人権規範に反したまま親子分離が漫然と引き続くだけの由々しき事態の発生を防止できます。
他方、この司法審査を省略すれば、施設措置に不同意の親の権利が不当に奪われてしまいます。
このことから、親子分離をもたらす28条審判に重大な利害関係をもつ親を手続に関与させることとしたものと考えられます。
我が子が成年に達したからといって、親は、民法第877条に基づき、子の扶養義務から免れません。子が未成年であったときと同様に、子の生育環境について第一義的責任を負っています。また、子どもの側からは、社会福祉の補足性原則に則り、公的福祉に優先して子は親からの扶養を受ける権利があります。しかし、児相長の一存で成年者の施設措置がなされてしまうことになれば、そのような親の子に対する扶養責任と権利が、児童相談所長の恣意により一方的に排除されることになります。
ところが、新たに18歳を成人年齢とする民法改正がなされたにもかかわらず、厚労省は、児童福祉法の必要な改正をあえて行わず、自律性が認められた成人の者をも施設入所措置の対象とし、加えてそのための家庭裁判所審判までも排除して、児童相談所長がその一存で施設措置できると解釈できる法制度にしたのです。このような「社会的養護」施設利権の忖度ばかりが前面に出た法制度は、その施設入所措置を受ける者の自己決定権(憲法13条前段)及び家族の自律権(憲法24条)を侵害し、憲法違反です。また、施設入所措置に際し、これを受ける者及びその家族に対し、手続に関与する仕組みを設けなかった点で、適正手続の原則(憲法31条)に違反し、やはり憲法違反です。
ひとたびこのような、成年者を行政機関長の一存で人身拘束できる制度が確立すれば、この前例は、有事や緊急事態の場合にも拡張され、憲法が保障する市民の自由権が公権力により全般的に侵害される全体主義国家を我が国に招来する虞があります。

児童養護施設長は、成年者に「措置権」を行使できない

18歳以上の成年者については親権者がいなくなるので、児童養護施設長の「措置権」が失われます。なぜなら、施設長の「措置権」(児童福祉法47条3項)は、「入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる」と、親権者の存在を前提しつつ、その対立物として「措置権」が規定されているからです。公立学校生徒に課す校則遵守義務のような、施設管理権に基づく規定ではありません。親権者がいない場合の「措置権」行使は1項に定めがありますが、これについても「親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間」とされ、将来における親権者の存在が前提されています。それゆえ、児童が18歳で成年したあとは、親権者が将来にわたって存在しなくなるため、いずれの項にも該当しなくなります。従って、児童養護施設長は「措置権」の行使を継続する法的根拠を失います。
すなわち、児童相談所長が18歳以上の成年者に仮に一方的に施設措置したところで、「措置された」成年者はもはや施設長の「措置権」に従う法的義務がないのです。施設職員の指示に従う必要は無く、それで暴力・暴言などを職員から浴びせられれば、施設のある空間から抜け出すことも自由です。それにも拘らず、公権力が強行的に施設長の「措置権」を押し付けるならば、それは18歳を成年者としてその自己決定を尊重するという民法改正の趣旨からまったく逆行した、違憲・違法の強制が児童養護施設内に作り出されることとなります。

むすび

厚労省は、18歳以上の者が成年になるという民法改正にあたり、成年者が自立的な個人になるという成人にとって最も重要な特質を完璧に無視し、ただ親権者が居なくなるという点のみに着目して、「社会的養護」利権が極大化するよう児童福祉法を改悪しました。このため、本年4月1日から、18歳以上の者は、未成年の児童よりも酷い自由権の剥奪のもとにおかれる危惧が高まっています。
本年4月1日以降、児童相談所長が18歳以上の者を「延長者」と称して児童養護施設に入所を強制することは、新民法の規定に違反する重大な人権侵害であり、決して許されません。児童相談所が、更新に裁判所の司法審査を経ず、「福祉」の口実を振り回して児童養護施設等への人身拘束を強行し続けることは、明らかに違憲・違法と言わざるを得ません。18歳で成年となったにも拘らず、不当な「施設措置」を受けている方々は、すべからく憲法が保障する完全な自立性を求めて、人身拘束されている本人もそのご家族もしっかり闘いましょう!
 18歳以上の成年者が、児童養護施設の人身拘束から解放され、実親との何ら制限されない交流や実親による扶養など、権力により何らの妨害や介入が加えられない市民的自由を確保するため、立ち上がりましょう!
なお、このことは、「こども(家庭)庁」でさらに利権を増大させようと企んでいる「社会的養護」業界への無駄な財政支出を縮減するうえでも、不可欠といえます。