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すすむ国連人権理事会の対日審査: 児相問題も勧告の俎上に

1月31日の作業部会で国際社会から出た、児相問題に関係する発言

昨年11月のUPRプレセッションに続き、国連総会の直属機関である人権理事会でいま、日本の人権状況についての審査が進んでいます。
これは、国連憲章・世界人権宣言・当該国が締結する人権条約等の国際人権法やそれに基づく審査を踏まえて国連に加盟するすべての国が約4年半ごとに審査対象となるもので、子供の権利委員会、人権委員会等の個別人権条約に基づく審査のいわば集大成ともいえるものです。
この審査のやり方は、個別人権条約に基づく審査と大きく異なり、各国が互いに勧告を出し合う、ピアレビューの形式をとっています。国連加盟国すべてに、日本に対する勧告を出す権利があります。去る1月31日に、ジュネーブにおいて、この対日審査の一過程として口頭で各国が日本に対する評価と勧告を出す作業部会が開催され、115の国が日本に対して意見を述べました。

Screenshot of media.un.org

会議は3時間半にわたりましたが、発言する国の数が多いので、各国の発言は1分に制限され、長く話していると議長に制止されます。短い時間では、自ずと各国の勧告は一般的な論点にならざるを得ません。それが今回は、パリ原則に準じた国内人権機関設置であり、死刑へのモラトリアムと廃止といった論点で、これには多くの国が言及しました。児童虐待に対する対策を求める勧告もみられ、こども家庭庁の設置を評価する発言も、2ヶ国からありました。
とはいえ、厳しい時間的制約にも拘らず、児童相談所問題においてカギとなる、児童福祉法33条1項(一時保護)にかかわる問題に関連して、ウルグァイとオランダが言及を行ったことが注目されます。チャドは、児相を名指ししませんでしたが、日本は子供の権利条約を完全遵守せよ、と勧告しました。完全遵守の要求ということは、児相の条約違反の行政もその要求に含まれますから、具体的に言えば、児相の人権侵害を止めよ、という勧告をも意味します。日本のODA資金に期待するアフリカの途上国としては、精一杯踏み込んだ勧告だと思います。また、児相被害者が国連子供の権利委員会に直接人権侵害を提起できる個人通報制度を日本が早く批准せよ、という勧告を、ニュージーランドとスペインが行ないました。これも、児相被害者にとって貴重な応援です。
このような国際社会からの勧告に対し、同日の作業部会のなかで、日本政府代表団が口頭で回答を行ないました。厚労官僚は、児童虐待問題に関連し、児童福祉司を増員する、児童相談所を拡充するとだけ述べ、ほんの2箇月前に国連人権委員会が勧告した、児童福祉法33条1項を再改正する要求については、日本政府は全く無視を決め込みました。
この作業部会の後、抽選で選ばれた「トロイカ」と呼ばれる3つの国が、報告書をまとめます。今回は、パキスタン、パラグアイ、そしていま果敢に祖国への侵略と戦っているウクライナが、日本を審査するトロイカのメンバーです。

「トロイカ」による対日報告書

これは、1月31日に各国からなされた対日勧告に関わる発言を文章に書き起こし、改めてこれをトロイカの3国が取りまとめた文書です。4月21日付けで発出されました。下記のリンクから、ご覧ください:
https://undocs.org/en/A/HRC/53/15

ここには、これまでの国連人権理事会には無かった、児童相談所問題に関する勧告が、はじめて明示的に書きこまれました(以下、日本語訳は弊会によるものです):
まず、国連人権関係委員会が日本の児相問題の核心部とみなしている、児童福祉法33条1項(一時保護)について、

158.231 家庭環境を奪われている児童の状況に関する現行の国内法を見直し、強化し、児童の家庭からの分離を決定するための義務的な司法監督の導入を検討し、もって児童の権利の完全な享受を保証せよ。

との勧告が出ました。
次に、日本の裁判所が子どもの権利条約等、日本が批准している人権条約を判決や審判の際の法規範として用いず、それにより条約が事実上法廷では死文化してしまっていて、国際規範が保障するはずの人権が日本の市民に享受されていない問題について、

158.109日本の裁判所において国際人権条約を適用することを求める慣行が実行されるように検討せよ。

と勧告されました。
さらに、このガラパゴスのような国内法制度からの救済を児相被害者が国際社会に求めようとしても、日本政府が個人通報制度に関する選択議定書をどの条約についても批准していない問題について、

158.27子どもの権利委員会への個別の通報を可能にするため、通報手続に関する子供の権利条約の選択議定書を批准せよ。

と勧告されました。158.28にも、同趣旨の勧告があります。
以上から、日本の市民には児童相談所に関し国際人権規範が保障するはずの人権を保障されておらず、しっかりした司法審査も無いまま国家権力の恣意で子供達が児童相談所に連れていかれている「中世並み」人権状況を、何とか改善してやりたいという国連人権理事会の熱意がひしひしと伝わってきます。

国連人権理事会、児相問題につき初の勧告を公式に発出!!

2023年7月10日、国連総会直属機関である人権理事会において、作業部会の取りまとめが、児相問題に関する部分についてはそのまま承認され、最終的に、国連人権理事会公式の対日勧告となりました。
なお、上記158.231項の勧告について、「一時保護状」を導入することとしたので解決済みである、といった反論は日本政府からなされなかったので、作業部会の取りまとめがそのまま公式勧告となりました。
国連総会直属の人権機関からの、日本の児童相談所に関する勧告がはじめて実現したことになります。 
日本の児相被害者が児相問題を国際社会に訴え出た粘り強い運動の成果が実ったのです!
この国連人権理事会勧告をバネに、児相被害者はますます児童相談所ならびに子ども家庭庁との闘いを強めましょう!!

(編集)2023年9月24日: 国連人権理事会の最終的な勧告が出たことについて述べるため、文章を修正。