2010年度の水岡ゼミでは、日本の長崎県対馬、韓国の浦項及び鬱陵島を、9日間に渡り巡検しました。
日本と韓国は隣国同士で、近年では日本における韓流ブームもあり、互いの国への関心をもつ人々や、訪れる人々が増えています。その反面、日韓間には未だに争いがあることも事実です。
私たちは、これらについて、つとめて客観的な知識が得られるよう、巡検に先立ち、対馬の歴史、戦後の日韓関係、竹島問題などをゼミで学習しました。実際に現地では、目で見て、できるだけ客観的・中立的な立場から日韓関係を考えようという意識のもと、巡検に向かいました。
今回の巡検のテーマは2つあります。
1つは、日韓関係です。
対馬は朝鮮半島との架け橋となっており、江戸時代は、幕府と朝鮮をつなぐ外交・貿易を全面的に担っていました。浦項にある浦項製鉄所は、いま韓国の工業を支え、世界有数の製鉄所となっていますが、建設に必要な技術と資金は、日本がほぼ全面的に提供しました。また、浦項郊外や鬱陵島には、戦前に日本人が移住した際の家屋が残り、保全の動きが始まっています。とはいえ、竹島は日韓双方が領有を主張しており、現在も解決に至ってはいません。これらの、いぜん複雑な日韓関係を象徴する場所の視察と学習をつうじて、両国関係の理解に努めました。
2つ目は、島々の地理的位置の問題です。
対馬も鬱陵島も国境近くに位置し、本土から見れば周縁にあります。しかし、周縁であればこそ、逆に国境経済というチャンスを持ち合わせています。日本国内で過疎の離島として取り残されてきた対馬は、いまや韓国人おなじみの有力観光スポットとなりました。また、対馬高校は韓国に近く、韓国文化や韓国語学習に力を入れるクラスが設置されています。また、対馬は日本海への出口という位置にもあります。ロシアの南下政策やイギリスの北東アジアにおける覇権とかかわって、対馬の地理上の位置は、それぞれの国にどのような意義があったのかに着目しました。これらの島々の視察と学習を通じて、国境や地理的位置が歴史に果たす役割とは何なのかを考えました。
本巡検報告では、ゼミ生の目で見て感じたありのままの姿を報告しています。この巡検報告が、偏った報道によって生じている誤解を少しでも解くものとなれば幸いです。また、対馬、鬱陵島、竹島問題にさらに興味を持っていただくきっかけとなればと思います。
私たちの巡検報告を、ごゆっくりとご覧ください。
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