コラム 「色丹島」


 斜古丹/マロクリリスクは、色丹/シコタン島の北東部の斜古丹/マロクリリスカヤ湾に位置している漁業の町で、町の人口は1000人以上ある。
 色丹/シコタン島は、北海道の根室半島から約75kmのところに位置している。地質は根室半島と同じ系統のもので、根室半島と地形が似ている。火山や高山は、存在しない。
 ここ色丹/シコタン島は、現在も色丹/シコタン島はロシアに実効支配されており、樺太/サハリン島と同じサハリン州に属している。しかし、歯舞諸島とならんで「二島返還論」の対象となっていて、日本に返還される可能性が高い。現在日本は、北方の四島すべてを返還するようロシアに求めているが、ロシアは色丹/シコタン島と歯舞諸島/小クリル島列の二島ならば引き渡してもよいという姿勢を示している。この点で色丹/シコタン島は、択捉/イトゥルップ島や国後/クナシル島と政治的に異なった立場にあるのだ。
 かつてこの島は、千島樺太交換条約により日本領となった北千島/クリルに住んでいたアイヌ人の強制移住地とされた。
 戦後は、ソ連の実効支配下におかれ、国境警備隊の基地がおかれるなどして島は発展した。戦前にいくつもあった日本時代の集落は戦後に統合・廃村が進められ、現在目立った町はここ斜古丹/マロクリリスクと、その西側の穴澗/クラボザツク湾奥にある穴澗/クラボザボツクしかない。
 日本人が色丹/シコタン島をふくむ北方領土に渡航する際には、煩雑な渡航手続きが必要である。しかも、日本の外務省が、「ビザなし交流」以外の方法で北方領土に日本人が渡航することを自粛するよう呼びかけている。
 このように、日本人にとって大変訪れにくい島であるが、地理的にみれば色丹/シコタン島は根室とは目と鼻の先である。そんな地理的近接性から、日本人観光客を当て込んだのか、かつて香港の投資家が色丹/シコタン島にカジノをつくる計画をたてた。だが、結局計画は放棄されてしまった。もともとその投資家は、金持ちが多く住む国に近接した場所に、その金持ちの国では禁止されているカジノを経営すれば儲かる、という国境経済的な発想で、中国の海南島にカジノをつくり大儲けをした。同じことを日本でも考えたのだが、しかし、上記の日本の外務省のスタンスを知って、色丹/シコタン島でのカジノ計画は不可能と判断したのである。

(栗野 令人)

(参考文献)
外務省HP、David Rees "The Soviet Seizure of the Kuriles"

8月30日 色丹/シコタン島、国後/クナシル島 に戻る 2006巡検トップに戻る