『Professional Geographer』廃刊の動き

〜アメリカ地理学会の最新動向〜


 1999年3月27日、米ハワイ州ホノルルで開催されたアメリカ地理学会では、 『AAAG』と『Professional Geographer』との併合により事実上後者を廃刊する こと、『AAAG』を分野別に分割することなどを主内容とする刊行物発刊体制 変更をめぐる集会が開催され、アメリカ地理学会執行部も出席し2時間近 くにわたり激論が交わされました。会場には、Neil Smith (パネラー),  Audrey Kobayashi 氏の姿もあり、積極的に発言していました。

 Neil Smithが指摘するように、この変更は、日本の経済地理学会の「規 約変更」などと同様、新保守主義を背景にもっています。

 その審議過程で一般会員を無視し、すでに既成事実のように提起する というその非民主的で閉鎖的な意思決定方式に、強い批判がだされまし た。

 また、『AAAG』を分野別に分け、各分野ごとに最低限の掲載論文を割り当 てるという提案については、ホノルルの学会報告数で数えると約3分の1を 占めるに至っている「社会理論」(critical geographyなどの流れ)の分野が、 より報告数が少ない自然地理学などに圧迫されかねないという危惧も表明 されました。

 「女性の地理的パースペクティブ」部会Altha Cravey氏(ノースカロライナ 大)からは、次の宣言文(水岡訳、英文の原文ご希望の方は、水岡まで 連絡してください)が読み上げられました。

「『女性の地理的パースペクティブ』部会メンバーは、アメリカ地理学会の将来 の刊行物に関してアメリカ地理学会評議会が最近とっている決定と行動に激しく 抗議する。我々は、今日までになされた議論と行動が、熟しておらず、 排他的で、しかも部分的・選択的・かつ不完全な情報に基づいたものであると 考える。とりわけ、『女性の地理的パースペクティブ』のような部会メンバーに は、この機関誌の変化がもたらす含意について適切な情報が与えられてこな かったし、この重要な意思決定の過程に加わる機会も与えられてこなかった。 それゆえ、我々は、より包括的で民主主義的な過程に基づいて公式の系統 的説明がなされ合意されるまで、刊行物のいかなる変化にも反対する。」

以上には、わが国の経済地理学会の「規約変更」問題の審議過程との共通性 を見て取ることができましょう。しかし、アメリカ地理学会会員のほうが、民主 主義に基づく健康的な批判精神という点において、はるかに多くのものを持っ ているようです。


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