経済地理学会設立趣意書


 我国の経済地理学界は、近年多数の研究者を輩出せしめ、論者も亦多方面に亘って 発表され、その進展は誠にめざましいものがあります。又、経済地理的な諸問題に対 する他の社会科学部門にも多くの成果があげられて来ました。更に、我国の当面せる 国際経済・国民経済の地域的諸問題の解決に対しても、経済地理学に極めて多くの期 待がかけられて参りました。

 このような時期にあたり、経済地理の研究者が、出身・学派の狭い殻に閉籠り、そ の領域を固守するときには、もはや科学としての経済地理学の進歩は望めないばかり か、現実の課題に対しても答えることは出来ないでありましょう。私どもは、過去2 年間に亘り、経済地理研究会の名のもとに、ささやかな研究活動を続けてまいりまし たが、今般、経済地理学会を設立し、学問の領域にこだわらず、視野を広げ、他部門 の成果を取り入れ、会員を中心とした共同研究・自由で活発な批判と討論により経済 地理学の理論を高め、同時に現実の具体的な、経済地理的諸問題の研究を推し進め、 社会科学としての経済地理学を創造・発展・普及して行きたいと思います。

                      経済地理学会創立準備委員
                      代表 佐 藤  弘

1954年5月