差出人: Fujio Mizuoka; 水岡 不二雄 <ce00042@srv.cc.hit-u.ac.jp>
宛先: geo@ml.air.ne.jp <geo@ml.air.ne.jp>
件名 :
[geo 438] GE430-434について日時 : 1999年2月12日 21:00
GEO
メイリングリストの皆さん:
GEO430で、堤さんが、経済地理学会幹事会における2月6日の「規約変更」案
の強行採決につき、
>
私はこの問題に関する議論は、経済地理学会会員であるかないかをとわず、>
広く日本の地理学(あるいは地理学界)のあり方に関わっていると考えていま>
す。
とおっしゃっているのは,同感です.
このことに関わる小生の
GEO422のポストは、強行採決という手続きの問題点について焦点を絞った発言で、そこに至る背景にはほとんど言及しませんでし
た。このため確か、経済地理学会の様子をあまりご存知ない「広く日本の
地理学」にかかわる方(これには、一般の経済地理学会員も含まれます)には、
論旨がいささかわかりにくかったかもしれません。
ここに、
GEO431-434として、当日の議論について、配布資料も添付したより詳しい説明がポストされました。まず、これをポストした山田さんに、
感謝します。
GEO432にある通り、
>
幹事会の席では、熊谷圭知さんがテープ録音を準備していましたが、>
阿部和俊さんが録音しないことを求めたため、音声の記録は存在しません。
このため、「日本の地理学のあり方に関わ」るかも知れない重大さをはらむこの
日の経済地理学会幹事会の議論を再構成する手だては、当日出席していた
関係者のメモと記憶しかなくなりました。
記憶は、そのままにしておけばどんどん忘却の彼方に消え去ります。
こうしたとき本リストが、複数の方からの共同作業によって、音声に代るその
記録を再構成し、後世の地理思想史家にとって貴重な史料を遺せたならば、
私の
GEO422のポストが多少なりともそれに貢献したことになるわけで、嬉しく思っています。
また、もともと、
GEO435で述べられているように、このリストという場は、メンバーだけの排他的なものではありません(検索システムの登場は、このリスト
に、一層のオープンさを持たせることになりましょう)から、これによって、
本問題の重要さに多くの方が関心を持っていただけることにもなります。
こうした点から,今回の私のポストは,GEO
432-434を、補完しようとするものです.
内容に入りましょう。
GEO432
が指摘される、経済地理学会組織の問題点:
>
集会に関しては支部活動(関東・中部・関西・西南)の比重の大きい>
学会であり、学会活動における支部の比重が大きいにもかかわらず、>
学会全体としての幹事会なり、評議員会なりの構成メンバー選出の>
仕組みと、支部活動における中核メンバーの構成の仕方とが、うまく>
整合しない(整合させにくい)といった
各支部の不満、また、
>
また、会務の実質的な執行機関としての幹事会を構成する幹事>
は、(水岡さんのように)選挙で会員からの支持を集めて幹事に>
なった者と、(山田のように)会務の一端を末端で担うべく会長>
からの推薦という形を取って幹事になった者もまったく同等に>
扱われており、評決が求められる場合は、同じ一票と数えられ>
ます。しかも、幹事会には定足数もありません(評議員会にも>
定足数はない:定足数[委任状込みで全会員の1/5]があるの>
は総会だけ)。幹事会は出席が少なくても成立します。
という状況が、何らかの形でいずれ改めねばならないのは当然でした。
他方、学会である以上、組織の性格は、それが支える学問プラクティスの内実
と、不可分の関係にあります。又、組織自体、一般会員の研究動向やその変
化を学会諸活動において柔軟に最大限反映できる、民主主義的で風通しよ
いものでなくてはなりません。この2点には、おそらく、このポストを読んでお
られるほとんどの方が、納得していただけるのではないかと思います。
この
2点を踏まえつつ、上記の諸問題を解決するだけならば、よかったのです。
強行採決などしなくても、「規約変更」案は、満場一致で平和に幹事会を通
過していたでしょう。しかし現実には、対立案が出され、この対立を「解消」の
ためには採決の強行が必要でした。それは、一体なぜだったのでしょうか。
これに答えるには、私の縷縷とした説明よりも、昨年
12月12日の幹事会に出された、松原宏氏の規約変更案を見るのがよいでしょう。山田さんはこの
12月12日の幹事会には欠席だったため、
GEO432-434でこのことには全く触れられていません。そこで、全体像の理解のため、(
2月6日の幹事会で松原氏本人から一応撤回の意思表示があった)この松原案を、まず資料と
してここに示します:
----
松原案資料----
1998年
11月5日
経済地埋学会代表幹事 山本健児様
経済地理学会幹事 松原宏
経済地理学会における会則の改正について
前回の幹事会(1998年10月3日)での議論をふまえ、下記のような会則改
正案を提出いたします。
改正案のポイントは、以下の通りであります。
1.現行の幹事会は、低い出席率に表れているように、無理が生じてきている。
日常的な会務の遂行に関しては、少人数の常任幹事会が行うほうが望ましい。
2.常任幹事の選出にあたっては、民主的であるとともに、会務の遂行が円滑に
なされるような人材を選べるような工夫をする。
具体的には、役員による予備選挙を行い、候補者リストを作成し、これに基づい
て会員の互選により選出する。なお、候補者以外の会員への投票を妨げない。:
常任幹事会は、常任幹事長1名、支部代表の常任幹事4名、総務1名、編集2
名、集会1名、渉外1名を想定。
.役員が、長期間同じ任につくのを禁止し、世代交代を円滑に図る。
・従来のような幹事の選挙は行わず、総務、編集、集会、渉外、支部の各機能を
担当する幹事を常任幹事会が人選し、会長が推薦し、総会の承認を得る。
従来のような幹事会は、通常年1回の大会時のみとし、むしろ幹事は、各パート
での事業の遂行に注力する。
幹事は、各支部から各4名、総務4名、編集10名、集会2名、渉外2名、合計
34名を想定。
5.上記の点をふまえつつも、会則の改正はできるだけ少なくする。
記
第6条(役員)
l.本会に次の役職を置く。
(1)
会長 1名(2)
評議員 若干名(3)
常任幹事 10名(4)
幹事 若干名(5)会計監査 2名
(6)支部長4名
(7)顧問または参与若干名
2.役員の選出は、次の各項による。
(1)会長、評議員、常任幹事、会計監査は、普通会員の互選にもとづき総会に
おいて決定する。
(2)幹事は,常任幹事会の提案,会長の推薦に基づき,総会において決定す
る.
(3)常任幹事会は,互選によって常任幹事長を定める。
(4)支部長は、支部の推薦にもとづき会長がこれを委嘱する。
3.役員の任期は、次の各項による。
(1)任期は3年とし、再任を妨げない。ただし、連続して
3期をつとめることはできない。
(2〉補欠による任期は残任期間とする。
(3)任期満了後でも後任者の就任まではその職務をおこなう。
4.役員の職務は、次の各項による。
(1)会長は、本会を代表し、会務を総括する。
(2)評議会は、会長の諮問に応じ、会務の運営を助ける。
(3)常任幹事会は、会長を補佐し、常任幹事会を組織して会務を遂行する。
(4)常任幹事および幹事は、常任幹事会のもとに,一般の会務をつかさどり、
本会の事業を遂行する。
(5)会計監査は、本会の会計を監査する。
(6)支部長は、支部を代表し、支部の会務を総括する。
(12
月12日の幹事会に松原氏が提出した追加資料)―――
会則改正(案)の訂正およぴ補足説明
松原宏
第6条(役員)
1.本会に次の役職を置く。
(1)会長 1名(2)評議員
25名(3)常任幹事 9名(4)幹事
30名(5)会計監査 2名(6)支部長4名(7)顧問または参与若干名
2.役員の選出は、次の各項による。
(1)会長、評議員、常任幹事、会計監査は、普通会員の互選にもとづき総会に
おいて決定する。
<役員選挙の手順>これをもとに選挙規程を作成
1予備選挙
選挙権者 会長 評議員 常任幹事 幹事 支部長 会計監査
1 25 9 30 4 2
合計70名
(ただし関東支部長は会長が兼ねる)
被選挙権者 常任幹事9名(常任幹事長1名、支部代表4名、総務1名、編集2
名、渉外1名)
・選挙の結果をもとに、各支部から必ず1名以上が候補に入るよう上位得票者か
ら4名を選ぴ、残りの上位5名を加えた、計9名を常任幹事候補者とする。
・これとは別に、従来通り、評議員の互選により会長候補者を決定する。
・ただし、幹事による評議員候補者の選出は行わない。
2 本選挙
選挙権者 会員全員
被選挙権者 会長 評議員 常任幹事 会計監査
1 25 9 2
・投票用紙には、会長候補者リスト、常任幹事候補者リストを示す。
・ただし、候補者以外の会員への投票を妨げない。
3常任幹事会内の役割分担
・常任幹事の互選により、常任幹事長を選出。
・その他の役職については、協議により決定。
4幹事の人選
・常任幹事会にて、総務(3名)・編集(10名)・渉外(1名)・支部(各4
名 計16名)の各機能を担当する幹事を人選する。
5総会での役員の決定
---
松原案資料、終 ----
かなり長文ですが、要約すれば、実際に意思決定を担う代議機関構成員
を選出するにあたって、ひとつ前の期の役員の内輪だけでまず定数いっぱ
いの候補者リストをこしらえてしまい、一般会員はこうしてできた候補にただ
信任投票するだけ、という、共産主義下のソ連の制度ないしファシズム下の
大政翼賛会を髣髴させる間接選挙に改めよう、という趣旨です。一応,
「候補者以外の会員への投票は妨げない」となっていますが,
自由記入の場合票が散りますから、リストの「官製」候補者に勝る得票を
リストに載らない会員が得られる確率は
0に限りなく近いでしょう。前の期の役員が次期の学会の方向性を決めてしまうことになり、これが
繰り返されることとなります。これでは、経済地理学会における、海外の新
い研究動向などをうけた自由で柔軟な研究動向の発展・変化などは、
困難となります。さらに、「官製」候補者を選ぶ母体である幹事会は、
「従来のような選挙は行わず、総務、編集、集会、渉外、支部の
各機能を担当する幹事を常任幹事会が人選し、会長が推薦し、総会の承
認を得る」となっています。つまり、松原氏の案では、この常任幹事選出母
体構成員の選挙にも、一般の会員は一切関われないのです。さらに、
「幹事会は、通常年1回の大会時のみ」と明記されており、これが形骸化
することは明らかです。
これが案として生きていた
1月下旬、韓国のEARCAGの発表で、私はこの松原案による「常任幹事」選出方式について言及しました。
Neil Smithからは、
<どんな思想のアメリカ人でも、こんな、ある特定の流れをself-perpetuating
するような提案には眉をひそめるだろう>、という趣旨のレスポンスが返ってきました。アメリカ人の民主主義の
物差には、確かにこうしたシビアなものがあるでしょう。この認識が、
GEO417
で紹介した、経済地理学会のあり方に関わる決議をNeil Smithに提案させる一つの要因になったと思います。
2月6日の幹事会での出来事を理解するには、この日の会議だけでなく、
この日の議論がこうした以前の提案を背負いつつ開催されたという背景を、
念頭におく必要があります
(私は,1998年2月の幹事会に海外出張のためやむなく欠席した以外,幹事会には皆勤で、議論のいきさつは
ほとんど直接の経験から知っています)。
私が熊谷さんと代替案を共同提案することにしたのも、こうした
議論の積み重ねの中で,
12月の幹事会における松原案とそれに引き続く議論のなかに、学会そのものの存在へのある種の危機を感じた
からにほかなりません。
GEO433が紹介する、「強行可決」された「阿部ほか案」は、文面ならびに
これに対する
2月6日の幹事会での阿部氏による口頭説明に関する限り、上記の松原案と様相を異にしているようにみえます。
しかし、 2月
6日に出された提案は、実はこの松原案(そしてその時に出された、阿部氏案も同様)を踏襲するかたちで、すべて
30〜40名規模の「外側機構」と、
10名程度の「内側機構」という二重構造になっています。「熊谷水岡案」は、このうち、一般会員が直接選挙に関われない
「内側機構」を、単なる業務実行組織をするための連絡会のような性格
とし、会員が直接選挙でメンバーを選出できる「外側機構」を少なくとも
年
4回開催して、そこに実質的な意思決定の権限を委ね、学会の民主主義的な運営を図ろうとするのが眼目でした。
これに対し「阿部ほか案」では、「外側機構」が、たんなる「内側機構」の
選出母体に過ぎなくなり、実質的な審議の場としては形骸化する可能性を
はらんでおり、しかも、「外側機構」が「内側機構」を選出する手続きが
「それらの具体的な選出方法は、その他の役員も含めて、別に定める
役員選出規定による。」となっていて、不明瞭なまま残されているのが
特徴です。
阿部氏は、同案の細部に対する質疑応答の時間の中で、「常任幹事
10
名」の選出母体となる「評議員40名」の選出方法(「互選」と表現されている)について小生が質したのに対し、一般会員の自由記入(あらかじめ
候補者リストなどは作成しない)による直接選挙であって、定数
40名のうち、20
名は全国区から、8名は関東支部から、各4名ずつを中部・関西・西南支部から選出する、と回答しました。しかし、その先にはあいまいな点が多く、
場合によると、「役員選出規定」制定の段階で、松原案の亡霊のようなものが
忍びこんでくる可能性も、否定できません。しかも、「役員選出規定」は、
規約ではなく、その附則ですらありませんから、その内容は一切総会の
洗礼を経なくてもよいのです。一般会員は、こうした学会民主主義の根幹
に関わることとなるかもしれない重要な「選出規定」の審議決定に、一切
関われなくなります。これが、「阿部ほか案」の、重要な特徴です。
これに対し「熊谷水岡案」では、上述のように、学会の民主主義を
保障するため、
>30
名から成る常任委員会を年4回開催する
としました。しかし、これには
GEO433が述べるとおり予算の問題が関わっており、「阿部氏ほか案」を支持する側から、強い批判が出ました。率直に言っ
て、その予感は私にあり、予め熊谷さんと電子メイルでやりとりを試みた
のですが、十分な時間が取れず、この日の提案となったものでした。
それゆえ、会議でこの点に関するやり取りを聞かれた山田さん
が、
GEO433に示された
>
両案を折衷した案を、「熊谷水岡案」に対する修正として提案
されたことは、適切かつ時宜を得たものだったと思います。特に、山田さんの提
案が優れていると私が感じたのは、「内側組織」構成員(常任委員
6名)も、普通会員から直接選挙する、とした点でした。実は、これは、「折衷」どころか、
「熊谷水岡案」と比べてさえもラディカルな案です。ただ、
GEO433ではこれが文章で示されていますが、会議場での山田さんの提案のやり方は、
「熊谷水岡案」を読み上げながらそれに山田さんの修正を口頭で補足して行
く、という方式でした。修正個所が多数あった上、提案を書き取るには説明が
かなり早口だったので、どの程度のフロアの幹事がその全容を把握できてい
たのか、疑問です。それかあらぬか、せっかくの貴重な提案ながら、
>
ほとんど質問もなく、提案はされたものの議論の対象にはほとんどな
らないという帰結に終わりました。もし、きちんと紙に書かれた文章で幹事会メ
ンバーに配付されていたなら、状況は異なり、「山田修正案」はもっと評価され
ていたかもしれないと思うと、残念です。
GEO433-434の記述では、その後私が
>
席から立ち上がり、geo 417 でも紹介のあった、EARCAG のアピールと>Niel Smith
のペーパーを<資料>として出席者に配りながら、「こんな>
形では評決は認められません」と強く主張し
たことになっていますが、実はそれより前、
GEO433-434が触れていない議論の中で、「阿部ほか案」における、直接自由選挙による、と阿部氏が口頭
説明した「外側機構」(評議員会)について、それにより実質的な機能をもたせ
ようと真面目に考えられた跡がある
2つのかなり具体的な提案がフロアからなされています。私の記憶には発言者の実名が明瞭にありますが、フロアの方
からの発言ですので、ここでは仮に
A氏、B氏としておきましょう。A氏の提案の要旨は、「阿部ほか案」において、「外側機構」と「内側機構」
との連携を密にする必要があり、そのため、「内側機構」は「外側機構」に、
定期的に文書を配布してはどうか、というものでした。また、
B氏の提案の趣旨は、「外側機構」の開催を、必ずしも年
1回などと限る必要はなく、必要に応じ複数回開催することも視野に入れつつ、新しい慣行の定着を図っては
どうか、というものでした。私は、いずれも、このままでは問題があると考
えましたが、少し発展的に考え直せば、これらの提案は「阿部ほか案」にお
ける「外側機構」の実質化を図るという、貴重な要素をはらんでいました。
たとえば、
A氏が提案した紙の資料を郵送するというのでは一方通行の「お知らせ」になってしまうので、これに代ってメイリングリストや、
WEBの掲示板機能など、電子的にインタラクティブな情報手段を活用すること
にすれば、遠隔地の「外側機構」構成員どうしで、学会の意思決定
に関わる実質的な議論ができたかもしれません。
そこに、
>
議論が収斂する見通しが立>
たない以上、評決すべきだ、という趣旨の発言がありました。(阿部さんが>
最初に言ったかどうかは記憶していませんが、阿部さんはこの意見を支持>
していました。)
という状況が台頭したのです。「阿部さんはこの意見を支持してい」た事実は、
「阿部ほか案」を提案する側において、「外側機構」の実質化に対し、「山田修
正案」や、
A氏・B氏のような良心的な提案を、当日の議論で受け入れていく余地がない、ということを意味していたことになります。
もし、そうではなく、「阿部氏ほか案」提案の側に、歩み寄る意向があったな
らば、この
2氏の具体的提案や、「山田修正案」を触媒として、お互いの収斂は可能だったはずと考えられます。
山本代表幹事も、たしかに
>
「役職名と人数の食い違いはあるが両案には共通性が大きい」といった趣旨の>
認識
を示す発言がありましたが、これはそのように言ったというだけのことで、それ
以上のものではありません。これらのフロアから出された
<触媒>をもとにして、当日
>
何とか妥協案を作れないだろうかと座長=代表幹事として模索
したわけではありません。むしろ、できるだけ早く採決したい、という意向が、
強くにじみ出ていました。なお、山本代表幹事が中立ではなく、はっきり「阿部
ほか案」支持者であることは、すでに
GEO427で書いたとおりです。そこで山本代表幹事は、採決を行おうとするに際し、山田さんの発言を
しばしば引き合いに出しました。これについて、少し触れておきましょう。
この発言は、
GEO433にある、次のものをさしています。
>
両案について質問と応答が一通り終わった段階で、最初に意見を言>
ったのは山田です。内容は、議事進行の段取りについてでした。>
既にその段階で会議の残り時間は1時間ちょっとで、さらに後ろには>
もう一つ議題が控えていました。そこで山田は、「阿部ほか案」が第6条>
のみの改正案となっているのに対し、「熊谷水岡案」が第6条以外の会>
則改正を含むパッケージとして提案されていることについて、>
<「熊谷水岡案」が提起した第6条以外の会則改正については、次回>
以降の幹事会において議論する場を確保する>>
ということを条件に、今回は第6条についてのみ議論を行い、成案を得>
るべきだ、と意見を述べました。>
議事進行に関する山田の提案は全員に受け入れられ、その線に沿>
って議論が始まりました。
私は、この山田提案を耳にしたとき、とっさに、ある意味で危険だ、と感じま
した。山田さんの意図は、おそらく、「熊谷水岡案」の第
6条以外の部分を「次回以降」にまわすことで、第
1条から第5条までの改定案が、「熊谷水岡案」が否決された場合にいっしょに流れてしまうのを避け、第
1から第5条までの改定案を、今回の役員組織に関わる採決から一時「緊急避難」させて
おこうとするところにあったのでしょう。しかし、「阿部ほか案」を支持する人
々(山本代表幹事を含む)の考えは別で、山田さんの提案のうち、「第
6条の採決」部分のみをいわば「つまみ食い」的に利用しようとしただけでした。
決して、言葉の本来の意味において「全員に受け入れられ」
たわけでも、山田さんの意図を皆が認識して、それに「沿って」議論が進んだわ
けでもありません。その証拠に、山田さんは触れておられませんが、
強行採決後、山田さんがあらためて「熊谷水岡案」の第
1条から第5条部分を次回の幹事会で議題とするよう主張したとき、「阿部ほか案」を支持
した人々の反応は、この山田さんの主張に冷やかでした。その後、
山田さんと私が一緒になってフロアから要求した末、やっと山本代表
幹事は、何やらそれらしき案件の存在をしぶしぶ認め、
>
次回の幹事会で議案に盛り込まれる
という趣旨のことを語るようになったのです。それでも、本当に実行されるかど
うかは、
4月の幹事会の開催通知、そしてそれ以降の幹事会の状況を見なくてはわかりません。楽観的過ぎる見方は禁物です。
このように、当日の山本代表幹事の議事進行は、本来のフロアからの声を交え
た議論の流れがどうであるかということより、とにかく「2月
6日に採決ありき」、そして「阿部ほか案」でいく、という既定のスケジュールで、進んだといってよいで
しょう。
この既定方針の前には、民主主義的で生産的な議論は二の次の無力な存在で、
「阿部ほか案」が潜在的にはらんでいる問題、とりわけ、「役員選出規定」
がブラックボックスのままにされ、ここに依然多くのマニピュレーションの
余地がとりおかれている状態はそのまま温存されて、とりわけ「内側機構」
構成員の選出が一般会員の意向を反映しにくい日民主的なものとなる陥穽
が大きく開いたままとなっています(阿部氏が口頭説明で約束した「互選」
=直接自由選挙は、守っていただきたいものですが……)。他方、「阿部
ほか案」をより民主的なものにしようと試みて出された、「山田修正案」、
A
、B 2氏の意見は切り捨てられました。こうした状況のもとで、採決がなされたのです。
小生は、去る
12月の幹事会終了後、何人かの経済地理学会員(シニアな方を何人か含む)に学会の現況を話したところ、この「規約変更」案件については何も知
らない、それゆえ、来る
5月の総会では幹事会の議論の状況報告と討論にとどめ,採決すべきではない、という声がかなり聞かれました。
GEO43
2によりますと、
>
代表幹事の山本さんが幹事会の席で説明したところでは、役員に関する会則>
変更については、その進め方等を含め、千葉立也さんが代表幹事だった数年>
前から、幹事会、評議員会で議論がされてきた
ということですが、私が話をした評議員の何人かは,今回の「会則変更」
の具体的事実を、ご存知ありませんでした。論議は,「幹事会」という閉ざされた
場においてほとんど行われてきたといってよいでしょう.
>1997
年度(?)の評議員会では、幹事会が改正案を作り、総会にかけるべきだ>
と言う話になったそうですが、結局、1998年度の総会に間に合う形で成案を>
得ることはできなかった(そのため何の報告もなかった)そうです。
との点についても,
1997年度の評議員会に出席したある評議員の話では,「そのような話は余り出なかった」ということです。それゆえ、これを「妥当
なものと考えてよろしい」かには、疑問があります。小生が
>
慎重審議を強く主張し、議事の強硬的な進行に反対し
たのは、こうした会員の声を背景にしてでした。しかし、これも、無視されてしまい
ました。
以上からすれば、今回の事態が、会員の十分な意向を汲み、提案の問題点にかんし
審議を尽くさないままでの採決であることは、明らかだと思います。
ところで、
GEO433が紹介している「補足説明」資料(熊谷さんの文責)には、今回の「組織変更」の議論がはらむ根本的問題を的確に突いた
重要な文章が続いているのですが、なぜか
GEO433では欠落しています。それを引用しておきましょう。
---
「熊谷水岡案」補足説明資料(続き) ---
[
学会の内容とその質,学会の担い手の量と質]における構造的な「改革」をまったく構想せずに、「組織」やその「運営」方法の「改革」を実現したとしても、その
「効果」には限界があり、早晩「硬直化」が再現することが予想される。
したがって、組織運営の見直しと同時、あるいはそれに可能な限り時を近くして、
上記の点についての見直し・改革の議論が会員によって真剣に取り組まれるべきであ
ると考える。もちろん、会名や会誌名の改称については、ここで提案したものはあく
までひとつの試案にすぎず、きまざまな選択肢がありうるだろう。しかし、もし「経
済地理学会」あるいは「経済地理学年報」という名称が、学会内外を取り巻く諸状況
の変化にも関わらず、未来永劫にわたって維持されるべきだという「超保守的」で
「没論理的」な立場に立つのでない限り、その問題を議論することには積極的な意義
があるはずだ。それが、どちらかといえば「変わらぬこと」を旨としてきたようにさ
え思える日本の地理学
(界)に対し、現在の地理学を取り巻く危機的な諸状況を直視しつつ、積極的な「生き残り」と、多様な「オルタナティヴ」のあり方を模索してい
こうとする、私たちの学会が果たし得る真摯で誠実な役割ではないだろうか。
---
補足説明資料、終 ---
こうした、学会の内実と組織との関係にかかわる認識は、
「阿部ほか案」には、むろん全くありません。それゆえ,この一文が
ないと、「熊谷水岡案」の特質,そしてこれと「阿部ほか案」とが
ぶつかりあった
2月6日の幹事会の状況を、正しく理解いただけないのです。
学会名、ならびに雑誌名を変更することで、経済地理学会が
1954年に創立された際の批判精神という貴重な伝統(この点については、風巻
義孝「経済地理学会に至る歩みと出会い」『経済地理学年報』
44巻1号、1998
年 が手際よくまとめていますので、ぜひお読みください)の再認識を促し、
EARCAGやICGGの動向にも現れている、近年のグローバルな経済・社会地理学の研究動向などとも強い共鳴絃
をもてるようにして、経済地理学会を、新保守主義化の方向ではなく、
その創立の原点に立ち帰らせようとする努力を意味しています。
こうした理解のもとに、この「補足説明」に私も同意しています。
事実の叙述は,常に何かを切り捨てなければ不可能です。これは、
私の発言も,GEO
432-434の発言も,同じことです。ですから、私は,GEO432-434
の叙述が、このようにいくつかの重要な点を欠落させていることについて、「乱暴」などといった、
GEO424が憂慮する状況につながりかねない形容詞を用いることはしません。しかし、これらの欠落が、「阿部ほか案」と「熊谷
水岡案」との差異を見えにくくし、それをつうじて
>
今回の決定はいわゆる「強行採決」とはニュアンスが違っているように山田は>
思っています。
とする結論につながってゆくとしたら、やはりそこには問題を感じます。
とはいえ、
GEO434が言われるように、
>
今回決定されたのは、あくまでも5月の総会に向けて幹事会から提案される>
改正案です。総会での議論の流れによっては、まだまだ修正の余地も、>
改正が認められない余地もあります。
それゆえ、
2月の幹事会での事態もさることながら、今、より緊要なことは、来る
5月の総会において、この「改正案」を、学会の組織がより一般会員の意向を直接反映し得る民主主義的なものに修正すること、あるいは、この「規約
変更」は、重要であるにもかかわらず昨年
5月の総会で一言も言及がなかった事項で、本年度の事業計画にも含まれていませんから、来る
5月の総会では、幹事会での審議経過の報告とそれに関わる討論にとどめ、採決はしない
ようにする(継続審議)こと、さらに、「役員選出規定」(もし、こうしたもの
を実際に設けねばならなくなってしまったとして)に、一般会員の意向を代議
機構構成員の選出に反映しにくくする要素が入り込まないようにすること、
などの目標に向けた、前向きの粘り強い努力だと思います。
また同時に、学会や会誌名の変更、大学院生への学生会員制度の適用について
も、
>
議論の場を広く設ける
ことが重要です。とりわけ、名称の変更は単なる形式ではありませんから、この
議論は、経済地理学会という学問の制度がささえるプラクティスの内実を、
過去・現在・及び将来にわたって問いなおすことを意味します。
そのために、本メイリングリストが今後積極的な議論のプラットフォームとしての
役割を果たすことを、期待しております。
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Fujio Mizuoka, Ph. D.
水岡 不二雄Professor of Economic Geography
Graduate School of Economics, Hitotsubashi University
一橋大学大学院経済学研究科教授
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